猛暑続く欧州、感染症リスク上昇とECDCが警告
欧州疾病予防管理センター(ECDC、European Centre for Disease Prevention and Control)は7月29日、長く暖かい夏が欧州各地で感染症のリスクを高めていると発表した。単発の熱波ではなく、高温が長期間続くこと自体が、病原体や蚊などの媒介生物(vector、病気を媒介する生物)が増殖・拡散できる期間を延ばしているという。
何が起きたのか
ECDCが問題視しているのは、短期間の熱波と、持続する高温とを分けて考える必要があるという点だ。短期間の熱波と異なり、暖かい期間が長く続くと、蚊は世代を重ねて数を増やし、その分だけ病原体を取り込んで別の宿主に伝える機会も増える。ECDCはこの違いを踏まえて今回の警告を出した。また、各国間、および公衆衛生・動物衛生・環境の各当局間で、より緊密に連携するよう求めた。
背景
蚊が媒介する感染症は、気温が高いほど蚊の活動期間や繁殖サイクルが延びる傾向があることが知られている。ヨーロッパでは近年、デング熱やチクングニア熱など、もともと熱帯・亜熱帯地域の病気とされてきた感染症を媒介するヒトスジシマカ(tiger mosquito)の生息域が北へ広がっているとの報告が相次いでおり、気候の温暖化がその一因とみられている。ECDCはEUの感染症対策を担う専門機関で、加盟国の公衆衛生当局に科学的知見を提供する役割を担っている。今回の警告も、猛暑そのものより「暑さが続く期間の長さ」に着目した点が特徴で、従来の熱波警報とは異なる視点からのリスク評価といえる。
日本にとっての意味
今回のECDCの発表は、日本の夏の公衆衛生対策を考えるうえでも参考になる内容だ。日本でも近年、猛暑日が続く期間が長期化する傾向が指摘されており、デング熱やチクングニア熱を媒介するヒトスジシマカは国内にも広く生息している。過去には東京・代々木公園周辺での国内感染例のように、輸入症例をきっかけに国内で感染が広がった事例もある。ECDCが示した、単発の熱波よりも高温が続く期間に着目する視点は、日本の自治体や保健当局が蚊媒介感染症の監視体制や注意喚起のタイミングを検討する際にも役立つ考え方だろう。海外の専門機関がどのような基準でリスクを評価しているかを知ることは、日本国内の対策の妥当性を見直す材料にもなる。