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AIの建築パース、EUで表示義務化 現地8月2日発効のAI法第50条

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欧州連合(EU)で、AIが生成した写実的な画像・音声・動画に「AI製」であることの表示を義務付けるルールが動き出した。建築分野で普及が進む写実的なAIパース(完成予想図)も対象になるとみられ、表示のないまま公開した企業や個人は罰金の対象になり得る。

何が起きたのか

EU AI法(EU Artificial Intelligence Act)第50条が現地の8月2日に発効した。写実的に見える画像・音声・動画をAIで生成・加工した場合に、その旨の開示を制作者に義務付ける規定で、人を欺くことによる被害を減らす狙いがあるとされる。芸術作品など多くの創作物は適用を除外されているが、英法律事務所アドルショー・ゴダード(Addleshaw Goddard)のシモン・シェニェヴィチ(Szymon Sieniewicz)弁護士は、写実的なAI建築ビジュアルは同法のいう「ディープフェイク」の分類に入る可能性が高いとの見方をDezeenに示している。人が行き交う様子まで写実的に描いたパースをAIで作ったなら、表示は避けられないという理解だ。

同法のディープフェイクの定義は、実在の人物・物・場所・出来事などに似ていて、見た人が本物と誤認しかねないコンテンツを指し、未建設の建物や実在しない人物のような「架空だが写実的」なものも含まれる。第50条は、AIを開発する企業だけでなくAIを使うすべての事業者に義務が及ぶ、同法で最初の条項とされる。違反には最大1500万ユーロまたは年間売上高の3%の罰金が定められているが、シェニェヴィチ氏は、当局が直ちに重い罰金を科すことは想定しにくいとも指摘している。

背景

EU AI法は2024年に成立し、リスクの大きさに応じて条項ごとに段階的に施行されてきた。表示の具体的なやり方まで法は決めていない。求められているのは、AI製であることがひと目で分かる形で示すことと、読者や視聴者がそのコンテンツを最初に目にする時点で既に表示されていること、の2点だけだ。そのうえで、欧州委員会の関連指針は「AI generated」「AI modified」と記したアイコンの使用を求めており、委員会のAI室(AI Office)が作成したアイコンは誰でも使える形で公開されている。

対象は建築に限らない。製品写真をAIで加工して実物より魅力的に見せたり、色を変えたりする行為も表示義務の対象になるとされる。一方で、トリミングや色調補正、背景の差し替えといった単純なレタッチは除外される。文章は「公共の関心事について公衆に知らせる目的」で公開する場合に限って義務がかかり、サステナビリティやESG関連の文章は、人が実質的に確認したものでない限り表示が要るという。ホームページの接客チャットボットについても、最初のやり取りで「AIツール」であることを明示するのが安全な対応とされる。写実的な都市を舞台にするビデオゲームも、建築パースと似た立場に置かれ得るという指摘がある。建築ビジュアライゼーションの専門家の間には、手作業の3Dレンダリングを置き換えるAI生成への反発や、AIの学習をめぐる著作権への不満が根強く、今回の義務化はこうした層には歓迎される可能性が高いとみられている。

日本にとっての意味

日本には現時点で、これに相当する法的な表示義務は見当たらない。しかし義務はEU域内で公開されるコンテンツに広く及ぶため、EU向けに完成予想図を公開する建築・不動産の事業者、製品画像を扱うメーカーや通販、欧州の顧客向けサイトでチャットボットを使う企業は、日本からの発信であっても対応を求められる可能性がある。「AI製」の表示が品質への疑いではなく透明性の証明として定着していけば、広告や不動産表示のルールをめぐる同じ議論が日本にも波及することは十分に考えられる。なお、発効はあくまで義務の適用開始であり、実際に罰金が科された事例が報じられている段階ではない。