ザンビア大統領選、銅資源国の行方占う投票迫る
ザンビアで現地の8月13日、大統領選挙の投票が行われる。現職のハカインデ・ヒチレマ氏と、野党連合が推す元閣僚のブライアン・ムンドゥビレ氏による事実上の一騎打ちとされ、生活費の高騰への不満が広がる中で、この5年間の経済改革が評価されるかどうかが最大の争点になっている。
何が起きたのか
投票権を持つのは最大870万人で、その多くを女性が占める。候補には14人が名乗りを上げているが、専門家の分析では実質的にヒチレマ氏とムンドゥビレ氏の争いに絞られている。ヒチレマ氏は2021年、6回目の挑戦でようやく大統領の座を得た人物で、当時ザンビアは前政権下での過剰な借り入れの末にデフォルト(債務不履行)に陥っていた。就任後は債務再編合意をまとめ、国際通貨基金(IMF)の支援プログラムを再開させ、経済成長率をプラスに戻したことで、国際的な貸し手や投資家から評価されてきた。
しかし世界銀行の統計によれば、ザンビア国民の7割以上が1日3ドル未満で生活しており、食料価格の高騰や失業、貧困は依然として深刻だ。26歳の医学生は取材に対し「世界的には評価されているが、それを国内の暮らしに反映させてほしい」と語っている。この生活実感と対外的な評価のギャップを、野党のムンドゥビレ氏は攻撃材料にしている。同氏はルング元大統領に近い立場にあった人物で、分裂していた野党勢力の支持を集めて浮上した。専門家は、同氏の強みは北部・東部で旧与党の地盤を取り込めるかどうかにあり、選挙戦への参入が比較的遅かったことや前政権との近さが、支持拡大の足かせになる可能性もあると指摘している。有権者の半数近くが18歳から35歳で、若年層の動向が結果を左右するとみられる。
選挙戦では小規模な衝突や威嚇行為の疑いも報じられている。警察が支持者同士の衝突に催涙ガスを使用したケースがあったほか、ムンドゥビレ氏の政党は当局から選挙活動を制限されていると訴えており、同氏自身も西部モングでの集会で狙撃手が配置されていたと主張し「催涙ガスは氷山の一角にすぎない」と述べたと伝えられている。議会選挙も同時に実施され、直接選出の議席数は156から226に拡大される。大統領選の結果発表は現地の8月17日の予定で、過半数を得た候補がいなければ決選投票に進む。
背景
ザンビアは2021年、野党が選挙を通じて政権交代を果たした、アフリカでは比較的珍しい事例として注目された。ヒチレマ氏率いる統一国家発展党(UPND)が政権を握って以降、対外的には財政再建の優等生として扱われてきた経緯がある。ただし、こうしたマクロ経済の立て直しが実際の生活水準の改善に結びつくまでには時間差が生じやすく、これは新興国の経済改革でしばしば見られる現象だという指摘がある。物価上昇や雇用の乏しさが続く中で、国際的な評価と国内の実感のずれが政権批判の火種になりやすい構図は、今回のザンビアの選挙戦にも表れているとみられる。
ザンビアはアフリカ第2位の銅産出国で、政府は2031年までに生産量を3倍に増やす目標を掲げている。銅は電気自動車や再生可能エネルギー関連の設備に欠かせない資源で、世界的な需要拡大が見込まれている。鉱業分野では中国企業が主要な担い手となっており、これは中国がザンビア経済に大きな影響力を持っていることの表れとされる。今回の選挙は、こうした資源開発の方向性や外国資本との関係が今後どう推移するかにも関わってくる。
日本にとっての意味
日本のメディアでザンビアの政治が取り上げられることはほとんどないが、銅は日本の製造業にとっても身近な資源だ。電線やモーター、電気自動車のバッテリー関連部品など、銅は幅広い産業で使われており、供給の安定性は間接的に日本の製造コストにも影響しうる。ザンビアは生産拡大を目指す一方、鉱業への外国資本の関与は中国企業が目立っており、日本企業が銅資源の調達網でどのような立ち位置を取るかを考えるうえでも、ザンビアの政権が誰の手に渡り、どのような資源政策を取るかは判断材料になる。また、IMFの支援を受けながら債務再編を進めてきたザンビアの経験は、財政基盤の弱い新興国が国際金融システムとどう向き合うかという点で、日本の途上国支援や国際協力のあり方を考える際にも参考になる事例といえる。