セネガルで同性愛行為の取り締まり強化、71人起訴
西アフリカのセネガルで、同性愛行為をめぐる取り締まりが強まっている。現地時間の8月7日、検察当局は71人の男性を「自然に反する行為(unnatural acts)」の容疑で起訴し、裁判所に送ったと発表した。同性愛関係への罰則を強化する法律が成立してから数か月がたっての動きだ。
何が起きたのか
検察の発表によると、起訴された71人とは別に、28人の被告については容疑が取り下げられた。この法律が成立して以降、100人を超える人が起訴されており、その中には地元の著名人も含まれていたという。一部の著名人は、同性愛行為の疑いに加えて、HIVを意図的に感染させた疑いでも訴追されていたが、この容疑はその後取り下げられている。人権活動家は、性的マイノリティー(LGBTQ)のコミュニティが、政治家にとって意見の一致を得やすいテーマとして利用され、スケープゴートにされていると指摘している。
背景
セネガルではこの法律ができる以前から同性間の性行為は違法とされてきたとみられるが、今回の法律は罰則をさらに重くするものだったと伝えられている。同性愛の犯罪化や取り締まり強化の動きは、セネガル一国にとどまらない。西アフリカの周辺国でも同様の法整備が近年相次いでおり、東アフリカのウガンダでも同性愛に対する厳しい法律が導入された例が知られている。ガーナでも同性愛を厳罰化する法案が議会を通過したが、成立をめぐってはその後も曲折があったと伝えられている。こうした流れの背景には、欧米諸国の価値観への反発を政治的に利用する動きがあるとの見方がある。セネガルの首相は、西側諸国が同性愛を「押し付けよう」としていると批判する発言をしたと、同じ媒体が別の記事で伝えており、政府側がこの問題を対外的な主権や文化的独自性の主張と結び付けている様子がうかがえる。
日本にとっての意味
日本の主要メディアがこうした西アフリカの国内法運用を単独で報じることは少なく、この種の人権事案は通信社の短信以外ではあまり目に触れない。しかし、押さえておく理由はいくつかある。まず公衆衛生の観点だ。今回、HIV感染を意図的に広めたとする容疑は取り下げられたが、同性愛そのものを犯罪とする法制度は、感染の不安を抱える人を検査や治療から遠ざけてしまうという指摘が国際的な保健関係者からしばしばなされている。感染症対策の実効性という点で、犯罪化がむしろ逆効果になりうるという議論は、日本の感染症政策を考えるうえでも参考になる視点だ。次に実務的なリスクである。TICAD(アフリカ開発会議)などを通じて日本政府や企業がアフリカとの関係を深めるなか、駐在員や出張者の中には性的マイノリティーの当事者も含まれる。外務省の海外安全情報を確認し、企業側も多様性推進の方針と現地の刑事法との間にどう線を引くか、実務対応を迫られる場面が出てくる。さらに、日本国内では同性パートナーシップ制度を導入する自治体が広がりを見せている最中であり、その動きと正反対の方向に進むセネガルの事例は、性的少数者をめぐる制度が世界で一様に進歩しているわけではないことを改めて示している。