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リビア東部の軍情報部トップ暗殺、統一協議に影落とす

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リビア東部を実効支配する軍事組織「リビア国民軍」(LNA、Libyan National Army)の軍情報部トップ、ファウジ・アル・マンスーリ氏が現地時間8月10日夜、モスクを出たところで車に仕掛けられた爆弾により暗殺された。現地時間11日にはベンガジで葬儀が営まれ、LNA司令官ハリファ・ハフタル氏の息子たちを含む幹部が参列した。犯行の実行者は特定されていない。

何が起きたのか

LNAはアル・マンスーリ氏を「英雄的な殉教者」と称した。同氏はハフタル一族と近しい関係にある軍の重要人物で、2014年から2017年にかけては東部でのイスラム国(IS)を含むイスラム過激派組織との戦闘で重要な役割を果たした。2019年にハフタル氏がロシアの支援を受けて首都トリポリ制圧を試みた際にも関与していたが、この攻勢はトルコの後押しを受けたトリポリ側の勢力によって撃退された経緯がある。

事件は、東部当局が自らの統治地域の安定性を国内外にアピールしようとしてきた矢先に起きた。リスク分析を手がけるVerisk Maplecroft社のアナリスト、ハミッシュ・キニア氏は、これほどの要人を標的にできる情報収集力が背後にあったとみられる点で、今回の犯行はLNAの治安維持能力に対する信頼を大きく損なうものだと指摘している。

背景

リビアは2011年、独裁者ムアンマル・カダフィ政権が「アラブの春」の民衆蜂起で崩壊して以来、国家が事実上分裂した状態にある。国連が正式に承認するアブドルハミド・ドベイバ首相率いるトリポリ政府と、ハフタル氏とLNAが後ろ盾となるベンガジの対抗勢力が、それぞれ国の主導権を争ってきた。過去には国際社会の仲介で統一選挙の実施が繰り返し模索されてきたが、いずれも実現には至っていない。

折しも現在、アメリカが後押しする形でリビア東西の統治機構を一本化しようという新たな取り組みが進んでいる。LNAはこの計画を公式に支持する立場を示していた。しかしキニア氏は、今回の暗殺がこの政治的合意に向けた動きを複雑にしかねないと警告する。同氏によれば、東西どちらの陣営も現状の力関係にいつまでも満足し続けるとは考えにくく、新たな権力闘争が再燃する可能性もあるという。事件後、LNAはテロとの戦いを続け、リビアの制度の安定・治安・再統一に向けて取り組む姿勢を改めて表明したが、自陣営の最高幹部の一人が本拠地ベンガジで殺害されたという事実は、東部当局が抱える治安上の課題の深刻さを浮き彫りにしている。

日本にとっての意味

リビア東部にはシルテ湾岸の主要な石油輸出拠点が集まっているとされ、この地域はロシアとトルコがそれぞれ支援する勢力を通じて影響力を競う舞台になってきたとの指摘もある。今回、その治安を支えてきた情報機関トップが暗殺されたことは、東部の安定性そのものに疑問符を突きつけるものとなる。原油の国際価格は供給不安が生じるだけで敏感に反応することが多く、リビア産原油の供給が滞れば、日本の輸入コストにも波及し得る。加えて、東西統一を目指す動きに影響が出れば、リビア産原油の生産・輸出が長期的に不安定な状態に置かれ続ける可能性もある。日本国内では中東・北アフリカの内政不安が報じられる機会は少ないが、こうした地域の情勢は原油価格やエネルギー安全保障を通じて、日本の家計や産業活動にも間接的につながっている。