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元マクラーレンのデザイナー、スーパーカーの発想でカーボン家具

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家具ブランドEnnua(エンヌア)が、カーボンファイバー(carbon fiber、炭素繊維を樹脂で固めた軽量高強度素材)製の構造体を持つ家具「Element 01」を発表した。手がけたのは、元マクラーレン・オートモーティブのデザイナー、ジョアン・ディアス氏とパトリック・カートン氏。時速200マイル(約320km)を超える車両の設計に携わってきた2人が、その発想を今度は動かない家具に持ち込んだ。

何が起きたのか

Element 01は一見するとテーブルやベンチのようだが、開発した2人は「機能を備えたアート作品」と説明する。中心にあるのはカーボンファイバー製のフレームで、これは表面を飾る化粧板ではなく、家具そのものを支える主要な構造材になっている。スーパーカーの車体骨格に用いられる「モノコック」構造と同じ考え方で、造形と強度設計を同時並行で進めたという。

素材には、皮革メーカーBridge of Weirのレザーと、同社の皮革製造過程で回収したコラーゲンから作るタンパク質由来のフォーム素材「BioPRO」を組み合わせた。金属部分はチタン、アルミニウム、真鍮から金まで幅広く使い、自動車設計で培った精密な加工基準をそのまま持ち込んでいるという。全工程がイギリス国内で行われる。

現地で6月中旬に発売されたElement 01は、1点ずつ番号を振った199点限定で、価格は約14万5000ドルから。購入者はディアス氏とカートン氏本人と相談しながら、カーボンファイバーの仕上げ(織り目を生かす、着色する、塗装で覆うなど)やレザー、金属のカラーを個別に決められる。いわゆる受注生産だ。2人は「ラインの一つひとつに存在理由がなければならない。装飾のためだけに付け加えるものは何もない」と語っている。今回のElement 01は「Element by Ennua」というシリーズの第1弾で、今後は形状や大きさ、用途の異なる作品を展開していく計画という。

背景

ディアス氏とカートン氏が在籍していたマクラーレンは、F1で培った空力技術や軽量設計をロードカーに転用してきたメーカーとされ、2人はハイパーカー「W1」や「Speedtail」の開発に関わっていた。自動車のカーボンファイバー・モノコックは、軽さと強度を両立させるために車体の骨格そのものを繊維強化樹脂で成形する工法で、量産車よりもコストがかかるためスーパーカーや航空機など一部の用途に限られてきた。近年はこうした自動車由来の高精度な素材技術やものづくりの思想を、時計、家具、家電といった非自動車分野に転用するブランドが世界的に増えているとの指摘がある。Ennuaもその流れに位置づけられる取り組みで、機能面での必然性がない装飾を避け、構造と造形を一体で設計するという姿勢は、まさに自動車設計の考え方を家具に持ち込んだものといえる。

日本にとっての意味

スーパーカーのデザイナーが家具へ、という転身の道筋には日本の先例がある。ピニンファリーナ時代にフェラーリ「エンツォ・フェラーリ」のデザインを手がけた山形市出身の工業デザイナー奥山清行氏は、2006年に独立して以降、新幹線E7系のような乗り物のデザインと並行して、飛騨産業と組んだ木製家具シリーズや山形緞通の絨毯など、国内の職人と作る家具・インテリアを一貫して手がけてきた。自動車で培った造形と精度の基準を、少量生産の暮らしの道具に移すという点で、Ennuaの2人と同じ発想を15年以上先に実践してきた人物といえる。

素材の面では、日本はこの分野の供給元でもある。Element 01の骨格をなすカーボンファイバーは、東レ、帝人、三菱ケミカルの3社で世界生産シェアの約5割を握る、日本の素材産業の主力製品だ。主な用途は航空機や自動車だが、高級家具のような新しい使い道が増えることは、この素材の需要の裾野を広げる。マクラーレン出身デザイナーの家具という話題の足元には、カーボンという日本が世界市場を支える素材の広がりという文脈がある。