アート・カルチャー

パルマの美術館で盗まれたセザンヌらの絵画3点、伊で回収

イタリア の記事一覧 ・ ヨーロッパ

イタリア北部パルマ近郊にある私設美術館「マニャーニ・ロッカ財団」から3月に盗まれたルノワール、セザンヌ、マティスの絵画3点が、イタリアの憲兵隊カラビニエリによって発見、回収された。3点の総額はおよそ900万ユーロ(日本円で十数億円規模)とされる。捜査は現在も続いている。

何が起きたのか

カラビニエリによると、現地時間3月22日、4人組の男がパルマ南方の田園地帯にあるマニャーニ・ロッカ財団の建物に侵入し、ルノワールの「魚(Les Poissons、1917年)」、セザンヌの「サクランボのある静物(Still Life with Cherries、1890年ごろ)」、マティスの「テラスのオダリスク(Odalisque on the Terrace、1922年)」の3点を持ち去った。警報装置が作動していたこともあり、犯行にかかった時間は3分に満たなかったという。

パルマを拠点とするカラビニエリの美術品捜査部門は、検察の指示による捜索の過程で3点を発見したと発表したが、発見場所や経緯など詳細は明らかにしていない。

背景

マニャーニ・ロッカ財団は、イタリア国内でも有数の私設美術コレクションとして知られる。収集家ルイジ・マニャーニによって1977年に設立され、1990年から一般公開されている。所蔵品にはデューラー、ティツィアーノ、ルーベンス、ファン・ダイクといった巨匠の作品も含まれる。

イタリアは国内に膨大な美術品・文化財を抱える一方、私設・小規模な美術館では警備体制が公立の大規模美術館ほど整っていない場合があるとみられ、こうした施設が盗難の標的になりやすいという指摘がある。実際、今回の犯行はわずか3分で完了しており、犯人グループが事前に警報作動までの猶予時間や館内の展示配置を把握していた可能性がうかがえる。カラビニエリの美術品捜査部門は、盗難美術品の追跡を担う専門組織として1969年に設立されたとされ、国際的なデータベースの整備でも知られる。今回の回収もその蓄積が生きた可能性がある。

日本にとっての意味

セザンヌ、マティス、ルノワールという世界的に知られた画家の作品が盗まれ、盗難から回収の発表まで(現地時間3月22日から8月14日まで)およそ5カ月を要した今回のケースは、美術品の保全がどれほど難しいかを示している。日本国内でも美術館や寺社が所蔵する文化財の盗難は過去に起きており、警備体制の強化や、来歴調査(provenance research、作品がどのような経緯で誰の手を経てきたかを調べる作業)の重要性が議論されてきた。海外で美術品市場を通じて売買される作品の中には、盗難品や不法に持ち出された文化財が紛れ込む懸念も指摘される。日本の美術館や画商が海外から作品を購入・借用する際にも、来歴の確認は取引の信頼性を左右する要素であり、今回のような事件は、その確認作業がなぜ必要とされるのかを具体的に示す事例といえる。