モザンビーク北部紛争、国連特別報告者が軍事的勝利は近くないと指摘
モザンビーク北部カボデルガド州(Cabo Delgado)で、イスラム国(Islamic State)とつながりがあるとされる武装勢力との戦闘が続いている。国連の特別報告者が現地調査をまとめた報告書は、政府側による軍事的勝利は近い見通しではないと指摘した。報告書は交渉による解決を促したと報じられている。
何が起きたのか
国連人権理事会(UN Human Rights Council)から任命された特別報告者ベン・サウル氏(Ben Saul)は、現地時間の8月4日から14日にかけてモザンビークを訪れ、同国の対テロ関連の法律や政策、その運用の実態を調べた。まとめられた報告書は現地時間の8月14日に公表され、カボデルガド州での武装勢力に対する軍事的勝利は近い見通しではないとした。
サウル氏は「過去1年間で、民間人を狙った攻撃の頻度や深刻さ、規模は増している」と述べた。斬首を含む、民間人や治安部隊を狙った攻撃が続いているという。
報告書は、モザンビーク軍を支援するためルワンダ軍が展開しているにもかかわらず、現在の作戦は武装勢力を積極的に掃討するのではなく、守りを固めることに重点を置く姿勢にとどまっていると分析した。その上で「これは戦闘の激しさを抑える一方、武装勢力が態勢を立て直す余地を与えかねない」と警告した。
紛争データを集める団体ACLEDの集計によると、犠牲者は2017年から2026年半ばまでに6,632人に上り、このうち2,772人が民間人だったという。避難を強いられた人は約150万人、2026年に人道支援を必要とした人は170万人に達したとしている。土地や生計手段、財産、行政サービスへのアクセスを失ったり、家族が離散したりする被害も報告されている。
特別報告者は人権理事会に任命された独立した立場の専門家で、その見解は国連の公式見解ではない。
背景
カボデルガド州では2017年ごろから、イスラム国とつながりがあるとされる武装勢力による攻撃が続いてきた。ルワンダ軍は欧州連合(EU)の支援を受け、2021年からモザンビーク軍を助ける形で同地域に部隊を展開している。
この地域が国際的に注目される理由の一つが、埋蔵量の大きい天然ガスだ。トタルエナジーズ(TotalEnergies、フランス)やエニ(ENI、イタリア)、エクソンモービル(ExxonMobil、米国)といった資源大手が、カボデルガド州のガス開発に関心を寄せてきた。武装勢力による攻撃の激化は、こうした資源開発の前提となる治安の確保が依然として不安定であることを示している。
日本にとっての意味
日本は液化天然ガス(LNG)の多くを海外からの輸入に頼っており、モザンビークの天然ガスも調達先の一つとして関心を集めてきた。カボデルガド州のガス開発には、上記の欧米資源大手のほか、日本企業も権益を持つとされ、日本の公的金融機関が事業に融資を決めたと伝えられている。
こうした事業を進めるには、施設や作業員の安全が確保できるだけの治安が欠かせない。今回の報告書が、軍事的勝利は近い見通しではなく、むしろ武装勢力が態勢を立て直す恐れがあると指摘したことは、事業の前提となる治安情勢の見通しが依然として不透明であることを意味する。遠いアフリカでの紛争に見えるこの問題だが、実は治安情勢が事業の可否、ひいては日本のLNG調達の先行きに直結しうるという点は、頭に入れておいて損はない。