ソマリア南西州バイドアで国軍と州部隊が衝突、政府は反政府勢力との共謀主張
ソマリア南西州の要衝バイドアで現地時間8月17日未明、国軍と、政府によって追放された州指導者派の部隊が衝突した。ソマリア連邦政府は、この州指導者がイスラム過激派組織アル・シャバーブと結託して襲撃を仕掛けたと非難している。
何が起きたのか
衝突が起きたのは、ソマリア南西州の州都バイドア。現地時間17日午前5時ごろ、南西州の元指導者アブディアジズ・ハッサン・モハメド・ラフタガリーン氏に忠誠を誓う部隊が、市内の国軍拠点を襲撃した。連邦政府の発表によると、この襲撃には爆発物を積んだ車両が使われ、応戦した政府軍側は戦闘員約30人を殺害したという。
ラフタガリーン氏側の広報担当者は、自派の戦闘員が市内の一部を掌握したと主張したが、AFP通信の取材に応じた住民らによれば、その部隊はまもなく市外へ押し戻され、政府軍が市の全域を再び掌握した。住民のアダン・ヌレイ氏は電話取材に、複数の地域で激しい戦闘があり、双方が市街のあちこちで銃撃を交わして戦闘は数時間続いたと述べた。別の住民サラド・アリ氏は、死者や負傷者が出て複数人が捕らえられたと語り、「道路に複数の遺体を見たが、正確な数はわからなかった」と証言した。市内で施設を運営する国境なき医師団(MSF)は、戦闘が「二つの前線」で起きたことを確認し、複数の死傷者が病院に運ばれたとしている。
背景
ソマリアは氏族(クラン)を基盤とする複数の準自治的な「連邦加盟州」に分かれた統治体制をとっている。連邦政府と各州の指導者の関係はもともと不安定で、権力の配分や資源、治安権限をめぐって対立が絶えないとされる。今回舞台となった南西州でも、連邦政府は今年3月、当時の州指導者だったラフタガリーン氏を追放するために軍を派遣した。同氏は5月にも州の奪還を試みたが失敗しており、今回の衝突はその延長線上にあるとみられる。
一方でソマリアは、中部の広い範囲を実効支配する過激派組織アル・シャバーブとの戦いを長年続けている。同組織はアルカイダ系とされ、政府軍や連邦を支持する部隊への攻撃を繰り返してきた。今回、連邦政府はラフタガリーン氏派の部隊がアル・シャバーブの支援を受けて襲撃を行ったと主張している。事実であれば、本来アル・シャバーブと対峙すべき地方の治安部隊が、連邦政府との内部対立を理由に過激派と手を組んだことになる。ハッサン・シェイク・モハムド大統領は、氏族長を中心とした従来の統治から民主的な選挙への移行を掲げてきたが、自身の任期延長への批判や、氏族間の対立、各地の治安悪化により、選挙の実施に向けた進展はほとんど無いとされる。
日本にとっての意味
今回の事件が示すのは、連邦政府が自国の地方軍と戦うことで生じる隙を、アル・シャバーブのような過激派が突く構図である。地方の反発が続けば続くほど、過激派掃討という本来の目標そのものが後退しかねない。
この地域は日本にとって遠い話ではない。海上自衛隊は隣国ジブチに拠点を置き、ソマリア沖・アデン湾での海賊対策や、周辺海域を航行する船舶の護衛にあたってきた。また日本は、国連などの国際機関を通じてソマリアの治安部隊支援や人道支援に資金を拠出しており、同国の政情が不安定化すれば、これらの取り組みの前提そのものが揺らぐ。海賊対策という限られた切り口だけでなく、ソマリア国内の政治対立がどう推移しているかを追うことは、日本の当該地域への関与の実効性を測るうえでも意味を持つ。