セネガル、資産公開の対象拡大 大統領とソンコ氏の対立映す
セネガル議会は現地時間の8月17日、大統領、首相、国会議長に対し、就任時と退任時の両方で資産を申告し公表するよう義務づける法律を可決した。165人の議員のうち133人が賛成した。バシル・ジオマイ・ファイ大統領と、かつての盟友でありながら今は対立するウスマン・ソンコ前首相との間で政治的な緊張が高まる中での採決となった。
何が起きたのか
新しい法律により、大統領、首相、国会議長は就任から3か月以内、そして退任から3か月以内に、それぞれ資産の申告と公表を行うことが義務づけられる。この改革は、ソンコ氏が率いる議会多数派が提出したもので、当初は大統領のみを対象としていたが、後に首相と国会議長にも対象が広げられたという。国会議長は、ソンコ氏が首相を解任された後に就いた役職であり、結果として自分自身も対象に含まれることになった。採決では与党パステフ(Pastef)内でも意見が割れ、一部の議員はこの法律がファイ大統領を弱体化させたり標的にしたりする目的で使われかねないと反対したという。ムサ・サール法相は、この改革はより広い制度改革の一環として位置づけるべきであり、憲法をめぐる国民投票に組み込んだ方が整合性が取れるとの考えを示した。
背景
セネガルでは2001年以来、資産申告の義務が設けられてきたが、今回の法律はその対象と手続きを拡大するものだ。ポイントは、単に当局へ資産を申告するだけでなく、その内容を公表し、しかも就任時と退任時の両方で行う点にある。就任時と退任時を比較できるようにすることで、在任中に資産がどう変化したかを外部から検証しやすくする狙いがあるとみられる。ファイ氏とソンコ氏は、2024年4月にマッキー・サル前大統領の12年にわたる統治を終わらせる形で政権を握った際、共に政治・制度改革を掲げて選挙戦を戦った盟友同士だった。しかし今年5月、ファイ氏がソンコ氏を首相職から解任したことで両者の亀裂は決定的になったとされる。ソンコ氏はその後、国会議長に就任し、ファイ氏は6月、憲法をめぐる国民投票を実施する意向を表明したが、時期は明らかにされていない。双方の支持者は、国家運営における透明性の欠如を互いに非難し合っているという。今回の資産公開法は、そうした与党内の緊張に新たな火種を加える形となった。セネガルは西アフリカの中でも政権交代が比較的平和に進んできた国とされるが、その分、改革派として政権を担った勢力の内部対立が制度改正という形で表面化している点は、注視に値する動きといえる。
日本にとっての意味
この出来事は、政治資金や資産の透明性という論点が、国や制度の違いを越えて共通の課題であることを示している。日本でも閣僚は「大臣規範」に基づき就任時と退任時に資産を公開するが、国会議員には退任時に改めて公開し在任中の変化を比較できるようにする仕組みがない。国会議員の資産公開をめぐっても、普通預金や家族名義の資産が対象外となるなど、公開の網から漏れやすい部分があると長年指摘されてきた。セネガルの事例は、資産公開を「申告」だけでなく「公表」し、しかも入口と出口の両方で行うことで初めて検証可能になるという制度設計の考え方を映しており、日本の制度を振り返る材料になる。日本とセネガルの間に直接の外交・経済上の太いつながりがあるわけではないが、改革を掲げて政権に就いた勢力が、その改革の中身をめぐって内部から分裂していく過程は、政治的立場を問わず起こりうる普遍的な力学として読む価値がある。