IKEAが「アートオブジェ」22点を9月発売 全て200ポンド未満
家具大手のIKEA(イケア)が、限定コレクション「KONSTRUNDA(コンストルンダ)」を現地の9月1日に世界の店舗とオンラインで発売する。作り手7人による22点で、価格は全て200ポンドを下回る。IKEAはこれらを家具や雑貨ではなく「アートオブジェ」と呼んでいる。デザイン専門メディアのDezeenが現地の8月19日に伝えた。
何が起きたのか
KONSTRUNDAはスウェーデン語で「アートツアー」を意味する。ガラス、陶器、家具、テキスタイルにまたがる22点で構成される。
価格の下端は、イタリア出身の建築家Emanuele Stamuli氏が手がけた白黒の花瓶の19ポンドだ。上端はロンドンを拠点とするデザイナーAndu Masebo氏のサイドテーブルで149ポンド。太い枠で全体を囲った形で、同氏の名を国際的に知らせた「Tubular Chair」を思わせる。Masebo氏はほかに、サイドテーブルにも台座にも使える幾何学的なスツールを2脚出した。1脚は無塗装の松材、もう1脚は明るい青に塗られている。
スウェーデンの作家Lisa Reiser氏は、自分の白昼夢を下敷きにした吹きガラスの花瓶を作った。鮮やかな緑の「グミキャンディ」のような一点がある。同じくスウェーデンのLisa Hilland氏は、松材のスツールと曲がった形のオレンジの彫刻を寄せた。Ingrid Leander氏とIgor Holtermann氏は共同でクッションとラグを手がけ、図案の元にしたのはストックホルムの街で見た横断歩道と工事用の注意帯だ。IKEA社内のデザイナーAkanksha Deo氏は、いまの社会の孤独を意識して器を2点作った。うち1点は積み木を重ねた人物のような形で、そばに誰かがいる感じを出す狙いだという。
背景
普通のIKEA商品と違うのは、作り方の順序だ。制作を率いたKarin Gustavsson氏はDezeenに「今回の依頼書は芸術的な表現についてのもので、機能上の必要や、解決すべき日々の課題から始めるものではありませんでした」と語った。IKEAは自社の設計方針を「デモクラティックデザイン」と呼び、機能、形、品質、サステナビリティ、低価格の5つで商品を測ってきた。その5つの1つである機能を、今回は出発点から外したことになる。
狙いはコレクタブルデザインと呼ばれる分野だ。一点物や少量生産の家具や器をギャラリーやオークションで扱う世界で、価格は美術品に近い。Gustavsson氏は「IKEAは、コレクタブルデザインに入り口の壁があってはならない、好きなもの、心に響くものを集めることは多くの人に開かれているべきだと考えています」と述べた。
Masebo氏にとって今回は、低価格の量産に踏み込む直近の仕事にあたる。ロンドンのUnit.dギャラリーで、折り曲げた薄い金属板から手頃な日用品を作って見せたのに続く。同氏はDezeenに、規模を広げることにはずっと関心があり、深みのある仕事をしたいが自分の周りの外にいる人にも届いてほしいと述べている。
日本にとっての意味
日本には、逆の方向から同じ場所にたどり着いた歴史がある。1925年、柳宗悦は濱田庄司、河井寛次郎らとともに、無名の職人が作った民衆の日用品を「民藝」と名付けた。使うために作られたものにこそ健全な美が宿るという見方で、1936年には東京・駒場に日本民藝館を開いた。今年で創設90年になる。民藝は日用品から出発して美に行き着き、IKEAは芸術的な表現から出発して日用品の値段に降りてきた。順序は正反対だが、家の中に美を置くという着地点は同じだ。
日本の量販店にとっては、まねしにくい話でもある。1980年に西友のプライベートブランドとして始まった無印良品は、食品31品目と生活雑貨9品目の計40品目から出発し、「わけあって、安い。」という言葉で、飾りを削って値段を下げる筋道を掲げた。装飾を足さないことがブランドの根拠になっている企業に、機能から始めない商品は出しにくい。
作り手の側から見ると別の景色になる。7人のうち社外の6人は、いずれも自分の名前で作品を発表してきた人たちで、量販店の棚に並んでも名前は消えていない。ギャラリーの外に出る道筋として、日本の工芸や現代デザインの作り手にも読める事例だ。