気候・災害

リベリア南東部で「カカオ熱」、天然林が急速に消失

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リベリア南東部のグランドゲデ州で、天然林がカカオ農園へと急速に置き換わっている。現地取材を行った報道メディアMongabayによると、隣国コートジボワールで農地が開発され尽くしたことをきっかけに、同国の農業労働者たちがリベリア側の土地に移動してカカオ栽培を広げているという。

何が起きたのか

グランドゲデ州は2020年まで、面積の99%が天然林に覆われていた。ところがそれ以降、カカオ農園がこの森を急速に侵食している。衛星データで森林減少を追跡する監視サイト「グローバル・フォレスト・ウォッチ(Global Forest Watch)」によれば、2025年の同州の森林減少量は、2002年以降のリベリアのどの州の単年の減少量と比べても最大だった。具体的な被害は地区ごとの証言からもうかがえる。州都ズウェドルにある森林開発庁(Forestry Development Authority)の地域本部を統括するイェイ・ネイゴー氏は、グバゾン地区(Gbarzon)の森林のおよそ70%が失われたとの見方を示した。同地区のズレ(Zleh)という町の周辺では、住民が代々共同で使ってきた森6900ヘクタールのうち、およそ82%がすでにカカオ栽培に転用されたと町の首長が語っている。こうした開発の一部は、住民が共同で管理する森として国に登録され、商業的なカカオ栽培が原則禁止されている区域の内部でも起きている。ズレ近郊でカカオ農園の労働者として働くモハメドさんは、「コートジボワールに森はもうない」として、だからリベリアに来たのだと話した。

背景

世界最大のカカオ豆輸出国であるコートジボワールでは、農地拡大のために森林の伐採が進み、既存のカカオ農園の多くが老朽化して土壌の養分も乏しくなっているとされる。そのため同国のカカオ農業労働者たちが、国境を接するリベリアのグランドゲデ州に活路を求めるようになったという。リベリア側の土地所有者たちも、収益の分け前と引き換えに土地を提供する形で受け入れている。南東部の森は本来、地域社会による共同所有とされ、私人が商業農業のために貸し出す際には法律で規制されている。しかし、コミュニティ林の議長を務めるアシャイ・ウル・ゲイエ氏によれば、こうした規制はほとんど守られていないのが実情だという。登録済みのコミュニティ林の内部にあるバウンダリーという町でも、他の集落でカカオ栽培が生活を変える様子を見た住民たちが、移民労働者を招き入れて栽培を始めた。得られた収入は住宅の屋根の修理や、子どもの海外留学の費用に充てられているという。同町の若手指導者プリンス・タールリー氏は「違法だとは分かっている」としたうえで、自分はその土地で暮らしており、生計を立てる手段が他にないことを訴えた。こうした背景には、現場の生計をめぐる切実な事情だけでなく、より大きな利害も絡んでいるとみられる。2025年にはリベリアの環境専門メディア「The Daylight」の調査報道が、グランドゲデ州の政府関係者が、コートジボワール出身のカカオ事業者との違法な土地取引に関与していたと報じた。長年活動してきた環境保護活動家のサイラス・シアコー氏は、末端の住民が生計を理由に語る話は、たいてい上部の有力者へとつながっていると指摘しているという。

日本にとっての意味

日本でカカオといえば、近年の価格高騰がチョコレート製品の値上げとしてたびたび報じられてきた。だがそうした報道の多くは相場の数字を伝えるにとどまり、供給地でどのような土地利用の変化が起きているかまでは触れてこなかった。今回伝えられたグランドゲデ州の事例は、価格高騰の背後で、国境を越えて農地が森を侵食していく具体的な連鎖の一端を示している。日本はカカオ豆のほぼ全量を輸入に頼っており、店頭に並ぶチョコレートの原料が、こうした森林転換の進む地域から来ている可能性は否定できない。もっとも、現状の輸入の仕組みでは、特定の豆がどの農地でどのように栽培されたかを消費者や企業が個別に確認することは難しい。欧州連合では、森林減少に関わる産品の輸入を規制する「森林減少防止規則(EUDR)」が成立し、供給網の透明性を企業に求める動きが強まっている。日本ではそうした制度整備がまだ本格化していないとみられ、今回のような現場の実態を伝える記事は、価格変動の理由を知るだけでなく、自分たちが日常的に消費する食品の裏側にある土地の変化を考える手がかりとしても読む価値がある。