リベリア、米国からの送還者最大1200人受け入れに合意
西アフリカのリベリアが、米国から送還される人を最大1200人受け入れることで米政府と合意した。第一陣20人は現地時間8月20日に到着する見通しで、受け入れは1年かけて段階的に進められる。トランプ政権による不法移民対策の枠組みの中でも、規模の大きい合意の一つとなる。
何が起きたのか
リベリアのジェロリンメク・ピア情報相は現地時間8月18日、首都モンロビアで記者団に対し、米国から最大1200人の被送還者を受け入れる方針を明らかにした。対象者にはアフリカ諸国や西半球(南北アメリカ)諸国の国籍者・出身者で、渡航が医学的に認められた人が含まれるという。第一陣20人は現地時間8月20日に到着する予定で、以後1年間かけて順次受け入れが続く。
ピア氏によれば、到着した被送還者はリベリア国内で難民認定(庇護)を申請することも、望めば同国を離れることもできるという。米国はこのプログラムの運営や、リベリアの移民管理体制強化のために支援を行うとしている。ただし、被送還者の中に、米国の移民裁判所から「本国に送還すれば身の安全に懸念がある」として送還禁止の保護命令を受けている人が含まれているかどうかについて、ピア氏は明言しなかった。
背景
通常、国外退去処分を受けた外国人は出身国に送還される。しかしトランプ政権は近年、本人の出身国ではない「第三国」への送還を積極的に進めてきた。出身国が受け入れを拒んだり、外交関係がなかったりする場合の代替策として使われる一方、送還先の国での安全や処遇が保証されないまま実施されるケースがあると、支援団体は指摘している。
今回のリベリアとの合意も、こうした一連の枠組みの一つだ。同様の取り決めの多くは、これまで詳細が公表されない「事実上非公開」の形で結ばれてきたとされる。問題視されているのは、対象者の中に米国の移民裁判所が「送還すれば危険にさらされる」と判断し、本国への送還を禁じる保護命令を出していた人が含まれる可能性がある点だ。今回リベリア側はこの点について具体的に説明しておらず、詳細は不明のままだ。
リベリアは西アフリカの小国で、米国とは歴史的に深いつながりを持つ。19世紀に米国で解放された元奴隷らが入植して建国された経緯があり、政治・経済面で米国からの支援を受けてきたとされる。今回の合意でも、米国側は移民管理体制の強化支援を提示している。
日本にとっての意味
日本の国外退去は出身国への送還が基本とされ、米国のような第三国への大規模な送還の枠組みは知られていない。そのため今回のようなリベリアとの合意は、日本の入管行政と直接重なる話ではない。
ただし、この動きは米国が移民送還を外交上の取引材料として使っている実例として注目に値する。米国は移民の受け入れを拒む国や、送還先を確保したい国に対し、経済支援や協力関係の強化と引き換えに、自国民ではない第三者の受け入れを求める交渉を各国と重ねているとみられる。こうした手法は、国際的な人の移動をめぐる政策が、当事者本人の意思や安全よりも国家間の取引を優先して動きうることを示している。
日本企業や日本人がアフリカ諸国と関わる際、こうした米国発の移民政策がその国の外交姿勢や国内の受け入れ体制にどう影響しているかを知っておくことは、現地情勢を読むうえで手がかりになる。また、難民認定や送還禁止の保護命令が実質的に無視されかねないという今回の懸念は、日本国内の入管収容や送還をめぐる議論とも重なる論点であり、他国の制度運用を知ることは自国の制度を考える材料にもなる。