猛暑で水・電気不足のチュニジア、大統領退陣求めるデモ再燃
現地時間の8月20日、チュニジアの首都チュニスで数百人が参加する抗議デモが起きた。参加者はサイード大統領の退陣と民主主義の回復を求めた。背景には、厳しい猛暑で電気と水が不足し、生活が圧迫されているという事情がある。
何が起きたのか
デモは、サイード氏が2021年に内閣を解任し議会の機能を停止させた節目の月にあたる7月の抗議デモに続くものだ。今回は新しい野党連合「ナフス(Nafas)」が呼びかけ、既存の反サイード派の枠を超えて政党や無所属の人物を集めようとしている。参加者は電気や水といった基本的な公共サービスの改善に加え、医薬品不足や物価高、自由の制限への対応も求めた。
デモ参加者の一人、ユセフ・フレリ氏は「水も電気もない」と述べ、この国は壁にぶつかったと語った。近年のデモでは、2011年のアラブの春で使われた「国民は体制の打倒を望む」という合言葉や、「デガージュ(Dégage、出ていけ)」という掛け声が使われるなど、サイード氏に退陣を迫る表現がより明確になってきているという。
サイード氏は2021年以降、独立系メディアや市民社会、異論を唱える人々への締め付けを強めてきた。同氏は批判者たちについて、外国からの資金提供を受けて騒乱を扇動し、チュニジアの国益を揺るがそうとしていると非難している。
背景
チュニジアは地中海に面した北アフリカの国で、2010年末から11年にかけて長期政権を倒す大規模な民衆デモが起き、これが「アラブの春」と呼ばれる一連の民主化運動の発端になったことで知られる。チュニジアはその後、中東・北アフリカの中でも民主化が比較的進んだ国とみなされてきたが、サイード氏は2021年に政府を解任し議会の機能を停止させ、以降権限を集中させてきたとされる。
今回のデモの背景にあるのは、厳しい猛暑だ。暑さで電力需要が過去最高水準に達し、国営の電力会社STEGは複数の地域で電力の供給制限に踏み切った。この停電は水をくみ上げる施設にも影響し、もともと一部地域で懸念されていた飲み水の確保の問題をさらに悪化させたという。生活に直結するインフラの機能不全が、政治への不満と結びついた形だ。
日本にとっての意味
日本でも近年、猛暑のたびに電力需要が跳ね上がり、需給ひっ迫が話題になる。ただ、日本ではこれは主に電力会社や政府の需給対策という行政的な課題として扱われ、政権の正統性そのものを問う話にはなりにくい。
チュニジアの状況は、同じ物理的なストレス、つまり厳しい暑さと電力需要の急増が、供給制限を経て断水にまでつながり、それが大統領の退陣を求める政治的な要求に直結してしまう国もあることを示している。インフラの余力や、自由な報道・集会が保障されているかどうかによって、同じ猛暑という気象現象が招く結果がこれほど違ってくるという事実は、気候変動が各国の統治のあり方をどう試すのかを考える手がかりになる。
またチュニジアはアラブの春の発祥地として、その後の中東・北アフリカ情勢の一つの指標にもなってきた国であり、今回の動きが今後どう展開するかは、日本ではあまり報じられない地域の政治動向を追ううえでも注目に値する。