ギニアビサウ野党、大統領権限拡大の国民投票ボイコットへ
ギニアビサウで、憲法改正の賛否を問う国民投票が現地の8月30日に実施される予定だ。主要野党PAIGCは不正投票への懸念から投票のボイコットを呼びかけている。この国民投票が、現地の2026年12月に予定される文民統治復帰のための選挙に先立って行われる点が、事態を複雑にしている。
何が起きたのか
現地の8月30日に予定される国民投票で問われるのは、国家移行評議会(National Transitional Council)が承認した新憲法案を発効させるかどうかだ。主要野党PAIGCは、憲法改正をめぐる議論から政党が排除されてきたと訴え、「不正を働こうとする明確な傾向がある」と非難し、投票のボイコットを呼びかけた。
新憲法案の柱は統治の仕組みそのものの転換にある。現行の議会中心の体制を改め、大統領に権限を集める大統領制へと移行する内容で、大統領が首相や閣僚を任命し、議会を解散する権限を持つようになる。ギニアビサウでは現地の2025年11月、大統領選挙の直後に軍がクーデターを起こし、当時の大統領を失脚させて選挙プロセスを停止させた経緯がある。文民統治への復帰を目指す新たな選挙は現地の2026年12月に実施される予定だが、有権者はそれに先立って、今回の国民投票で憲法改正の是非を問われることになる。
背景
軍事政権が選挙による文民統治への復帰を約束しながら、その前に憲法そのものを書き換える国民投票を挟むという順序は、統治の枠組みを自らに有利な形へ固定してから選挙に臨む狙いがあるのではないかという見方が成り立つ。仮に大統領制への移行が承認されれば、これまで議会と首相が担ってきた権限の多くが大統領一人に集中することになり、誰が次の大統領に就くにせよ、その後の政治の均衡は大きく変わるとみられる。
西アフリカでは、サヘル(サハラ砂漠南縁に広がる乾燥地帯)を中心に、選挙で選ばれた政権が軍に倒され、その後の統治の枠組みを軍主導で作り直す動きが相次いでいる。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、こうした軍による政権奪取に対して一貫して批判的な立場を取ってきた組織で、加盟国の民主的な統治の回復を求めてきた経緯があるが、今回の国民投票そのものに対してどのような対応を取るかは、現時点の資料からは明らかではない。
日本にとっての意味
ギニアビサウという国名は、日本のニュースで取り上げられる機会がほとんどない。しかし今回のように、軍が政権を掌握したのち、選挙の前段階として大統領権限を拡大する憲法改正を国民投票にかける、という手順は、西アフリカや中部アフリカの複数の国で同時並行的に報じられているパターンでもある。ある国で「選挙が実施された」「国民投票が行われた」という報道に接したとき、その投票が誰の主導でどのような制度変更を前提に行われたのかを合わせて見なければ、実態を見誤る可能性があるという教訓を、この事例は示している。