気候・災害

スペイン、カナリア諸島と地中海に海洋保護区23カ所を提案

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スペイン政府は、カナリア諸島周辺の大西洋と地中海の一部海域に、新たに23カ所の海洋保護区(MPA、marine protected area)を設ける提案をまとめ、公開協議の手続きに入った。対象は合計で2万2405平方キロメートルに及ぶ。実現すればスペインの管轄海域のうち保護対象となる面積は24.53%に達する見込みだという。

何が起きたのか

スペインの環境省にあたるエコロジー移行・人口問題省(MITECO)が現地の2026年7月にまとめたこの提案は、カナリア諸島を含む大西洋の一角「マカロネシア(Macaronesia)」と呼ばれる地域を中心に、地中海側ではバレンシア、アルメリア、グラナダの沿岸およびバレアレス諸島マヨルカ島周辺の合わせて4カ所を対象としている。

内訳は、EUの生息地指令に基づく「共同体重要地域(SCI)」が21カ所で、うちカナリア諸島周辺の17カ所が2209平方キロメートル、地中海側の4カ所が5341平方キロメートル。さらに海鳥の保護を目的とする「特別保護区(SPA)」が2カ所、カナリア諸島沖に1万4855平方キロメートルの規模で設けられる。

保護の対象となるのは、海草藻場(ポシドニアなど)、礁、海底渓谷、クジラ類やウミガメの生息海域、バロロミズナギドリ(Puffinus baroli)やアナドリ(Bulweria bulwerii)といった海鳥の採餌海域などである。この提案は現地の2026年9月15日まで公開協議にかけられている。

背景

スペインがこの提案を出す背景には、2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」で各国が合意した「2030年までに陸域・海域の30%を保護する」という国際目標、いわゆる30by30がある。スペインはこれまでに約24万平方キロメートル、管轄海域の22.5%を海洋保護区として指定してきたが、目標達成にはまだ距離がある状況だった。

もう一つの背景は、EUが独自に運用する自然保護の枠組み「ナチュラ2000(Natura 2000)」への対応である。EUは生息地指令に基づき加盟国に保護区の指定を求めており、欧州委員会は2023年、スペインが指定した保護区の数や範囲、場所が不十分だとして違反手続きを開始した。今回の提案にはこれに応じる形の追加指定という側面もあるとみられる。

ただし、保護区として「紙の上で」指定されることと、実際に漁業規制や監視体制が伴う「実効性のある管理」がなされることの間には大きな隔たりがあるという指摘が、米国に拠点を置く環境NGOオーシアナ(Oceana)などから繰り返し出されている。同団体の海洋科学者ヘレナ・アルバレス氏は、指定の方向性自体は評価しつつ、「問題は、指定された面積と、実際に管理計画がある面積を比べたときに生じる」と述べている。制度上の指定件数が増えても、密漁監視や漁業制限といった運用が追いつかなければ、生態系保護の実効性は限定的にとどまる可能性がある。

日本にとっての意味

日本も同じ30by30の国際目標を掲げており、2030年までに自国の海域の30%を保護区や、保護区に準じる「OECM(Other Effective area-based Conservation Measures、保護区以外で生物多様性の保全に資する区域)」として確保する方針を国として表明している。国立公園や自然環境保全地域に加え、里海や漁業者による資源管理区域などをOECMとして積み上げていく手法が検討されている。

スペインの今回の動きは、政府が具体的な候補地の地図と面積を示したうえで、現地の9月15日という期限を切って公開協議にかけるという、指定プロセスの進め方の一例として参考になる。日本でも海域の指定候補地や根拠となる生態系データをどこまで公開し、漁業者や地域住民の意見をどの段階で取り入れるかは、制度設計上の重要な論点であり続けている。

また、指定件数が増えても管理の実効性が伴わなければ意味が薄いというオーシアナの指摘は、日本の海洋保護区にもそのまま当てはまりうる論点である。国際公約の達成率を面積の数字だけで測るのではなく、実際にどれだけ生態系の保全につながっているかを検証する視点は、日本が今後、保護区指定を加速させていく局面で参照すべき教訓と言える。