米、スーダン内戦の両陣営に国連制裁強化を要求
米国は国連安全保障理事会で、スーダン内戦の両陣営に対する制裁を強化するよう求めた。現地時間8月24日の理事会で、米国のアラブ・アフリカ問題担当顧問マサド・ブーロス氏は、国軍と即応支援部隊(RSF)の双方が外国からの資金・軍事支援を受けて戦闘を続けていると指摘し、既存の武器禁輸をダルフール地域から国全体へ広げる決議案を示した。内戦は2023年4月の勃発から4年目に入り、死者は少なくとも5万9000人、避難民は1300万人に達している。
何が起きたのか
ブーロス氏が示した決議案は、現在ダルフール地域に限定されている国連の武器禁輸をスーダン全土に拡大し、国軍・RSFを含むすべての勢力を対象とする内容だ。ドローン(無人機)とその関連技術も明記して禁輸の対象に含めている。さらに各国に対し、直接・間接を問わず紛争を支える兵站・資金・軍事面の支援を止めるよう呼びかけている。米国は支援を行っている具体的な国名は挙げなかったが、エジプトは国軍への支持を公言しており、アラブ首長国連邦(UAE)はRSFへの武器供給疑惑を繰り返し否定している。
同じ理事会で国連の政治・平和構築担当のロズマリー・ディカルロ事務次長は、人道状況の悪化を報告した。避難民1300万人のうち870万人は国内避難民で、スーダン18州すべてに広がっている。国連人権高等弁務官事務所は今年1月から6月の間に民間人の死者約1400人を確認し、うち約1100人はドローン攻撃によるものだという。紛争開始以降の性的暴力の被害者は838人が確認されており、大半が女性と少女だとしている。戦闘は雨季にもかかわらず北コルドファン州や西ダルフール州・北ダルフール州、青ナイル州で続いており、国軍とRSF以外にも多数の武装勢力や地元民兵が独自の利害で動き、事態の細分化が進んでいるとディカルロ氏は警告した。
スーダンの国連大使アル・ハリス・イドリス・アル・ハリス・モハメド氏は、なぜ違反の責任者ではなく国全体への制裁強化という形をとるのかと疑問を呈した。国軍のブルハン司令官は、制裁で戦闘をやめるつもりはなく、RSFの支配地域をすべて奪還するまで作戦を続けると述べた。国連人道問題担当トップのトム・フレッチャー氏は、スーダンの人々に必要なのは食料や水、医薬品、そして和平であり、これ以上の武器や傭兵ではないと理事会に訴えた。
背景
スーダン内戦は2023年4月、国軍を率いるブルハン氏とRSF司令官のヘメティ氏(モハメド・ハムダン・ダガロ)の対立が武力衝突に発展して始まった。両者はもともと2019年に長期独裁を敷いたオマル・バシル政権が倒れた際に協力関係にあったとされ、その後の文民統治への移行過程で権力争いが深まっていた。移行のかなめとなるはずだった軍と準軍事組織の統合構想が破綻し、首都ハルツームでの戦闘を経て内戦へと拡大したとされる。
国連による武器禁輸は従来、紛争が集中してきたダルフール地域に限定されていた。今回の米国提案は、その対象範囲を国全体に広げることで、両陣営を支える外部勢力の関与を封じようとする狙いとみられる。ただし、どの国がどちらの陣営を支援しているかについて国際社会の見解は一致しておらず、エジプトとUAEの名が挙がる一方、米国は支援国を名指ししていない。安保理での制裁強化には理事国の合意が必要で、当事国であるスーダン政府自身が制裁の枠組みに異論を唱えている点も、決議の行方を不透明にしている。
日本にとっての意味
日本の主要メディアでスーダン内戦が取り上げられる機会は少なく、まして国連安保理での制裁協議という手続き面の報道はほとんど見られない。しかし今回の制裁強化案は、外国からの軍事支援の経路を絞り込もうとするものであり、その経路として名前が挙がるのはエジプトやUAEといった、日本が原油調達などで関係の深い中東・湾岸地域の国々だ。地域の緊張が長引けば、周辺国を通じた資源調達や物流にも波及しうる。
また、1300万人という避難民の規模は、国連の人道支援予算を通じて国際社会全体が負担を分かち合う構図につながっている。日本は国連への分担金や人道支援拠出金を通じてこうした活動を支えており、スーダンの人道危機が長引くほど、そこに投じられる国際的な資金の一部は日本の拠出金からも出ていくとみられる。制裁協議の行方は、単なる外交ニュースではなく、日本が間接的に関わる国際的な負担配分の問題として見ておく価値がある。