スウェーデン住宅開発企業、床面積1.9平米の「極小住宅」を発表
スウェーデンの住宅開発会社リクスビッゲン(Riksbyggen)と広告代理店BBDOノルディクス(BBDO Nordics)が、いまのスウェーデンで25歳が買える広さを基準に設計した3戸の住宅を発表した。最も小さいものは床面積わずか1.9平方メートル。若者を直撃する住宅危機を「目に見える、手で触れられるもの」にするための試みだという。デザイン誌Dezeenが8月26日付で紹介した。
何が起きたのか
3戸の広さは、リクスビッゲンの「平方メートル指数」に基づいて決められた。収入、住宅価格、住宅ローンの条件から、若者が何平方メートルの住まいを買えるかを算出する指標で、計算にはスウェーデン統計庁(SCB)とデジタル銀行アバンザ(Avanza)のデータが使われた。
対象都市は、地理的な広がりを持たせるためにストックホルム、ヨーテボリ、ウメオの3都市。全国平均の収入と貯蓄を持つ25歳が各都市で買える広さを計算した結果、ストックホルム向けは1.9平方メートル、ヨーテボリ向けは3.1平方メートル、ウメオ向けは4.5平方メートルになった。両社はこれらを「スウェーデン最小のアパート」と呼ぶ。
BBDOノルディクスのアートディレクター、アントン・ボリン氏は「狙いは、若者が直面する住宅危機を目に見える、手で触れられるものにすることだ。数字や統計はそこら中にあるが、簡単に抽象的なものになってしまう」と語り、「平均的な25歳が今日どれだけの住まいを買えるのかを正確に示し、その現実を体験してもらいたかった」と続けた。ボリン氏によれば、ストックホルム、ヨーテボリ、ウメオはいずれも若者の住宅需要が特に強く、同時に住まいを見つけて買うことが著しく難しい都市で、「3都市を合わせれば、この問題が南から北までスウェーデン全土の若者に及んでいることが分かる」という。
背景
3戸の制作にあたって、ボリン氏はストックホルムの制作会社デコールマカルナ(Dekormakarna)のベングト・スヴェドルンド氏と組み、外観をいかにもスウェーデンらしい住宅に仕上げた。「国中どこでも見かける典型的なスウェーデンの家に見せたかった。見慣れた建築とディテールを、異様なスケールで提示することで、状況の不条理さが即座に伝わる」とボリン氏は説明する。
デザインは3戸で異なり、1戸目は世紀転換期の様式で、「ストックホルム・イエロー」の塗り壁、ヘリンボーン張りの床、格子窓、天井モールディングを備える。2戸目は1930〜40年代の機能主義を下敷きに、すっきりした線と淡いパステル調の色、リノリウムの床、波板金属のバルコニーを持つ。3戸目はレンガの外壁と簡素で機能的な素材による現代的な住宅だ。発表にあわせ、スウェーデンのアンドレアス・カールソン住宅相も実際に1戸に入って体験した。
ボリン氏によれば、スウェーデンでは若者の5人に1人が今も親と同居している。「このプロジェクトがもっと多くの人に問題を語らせ、住宅政策の優先順位を引き上げることを望んでいる」とし、「だからこそ2026年9月のスウェーデン総選挙の前に発表した。次の政権が、私たちが必要と考える3つの住宅改革に取り組んでくれることを期待している」と述べた。
日本にとっての意味
若者が平均的な収入では住まいを買えないという構図は、日本の大都市圏でも進行している。不動産経済研究所の調査では、東京23区の新築マンション平均価格は2023年に1億円を超え、以後も高止まりが続くとされる。平均的な年収の20代が都心で新築を買うのは事実上不可能に近く、「数字としては知られているが実感しにくい問題」という点はスウェーデンと共通する。
その問題を、統計の解説ではなく「実際に建てて中に入れる1.9平方メートルの家」として提示し、選挙前に政治課題化を狙うという手法は、広告とデザインによる社会課題の可視化の好例であり、日本で住宅問題を訴える際の伝え方としても参考になる。