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エスワティニに退避勧告、中国が台湾承認国に圧力か

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中国政府がアフリカ南部のエスワティニに滞在する自国民に対し、直ちに国外へ退避するよう勧告した。エスワティニは台湾を承認する数少ない国の一つで、中国はサイバー詐欺やオンライン賭博を理由に挙げているが、エスワティニ政府はこの説明には根拠がなく遺憾だとして反論している。

何が起きたのか

中国外務省の領事部門は現地時間8月25日、中国国民と関連機関に対し、エスワティニから速やかに退避するか、南アフリカなど比較的安全とされる地域へ移るよう呼びかける声明を、中国のSNS「WeChat(微信)」上で発表した。声明は横行するサイバー詐欺やオンライン賭博の犯罪活動を治安上の懸念として挙げ、「渡航や滞在を続ければ極めて高い治安リスクに直面し、領事支援が迅速に受けられない可能性もある」としている。同国には織物、小売、飲食業などで働く中国人が200人以上いるとされる。同国は今年、オンライン賭博や恐喝、サイバー詐欺のネットワークに関与した疑いで少なくとも55人の中国人を摘発している。

これに対しエスワティニ政府は現地時間8月26日、中国側の治安リスクの主張には根拠がないとして反発し、自国の外交方針について「威圧や不利益、不安定化を許さない」との立場を表明した。

背景

エスワティニは世界で台湾を承認する12カ国の一つで、アフリカでは唯一の承認国とみられる。中国は「一つの中国」原則のもと、台湾と外交関係を持つ国に対して国交断絶を働きかける外交攻勢を長年続けており、この数十年で台湾の承認国は大きく減ったとされる。

エスワティニを巡っては今年5月、台湾の頼清徳総統が同国を訪問した。台湾側は、この訪問を妨害しようと中国が周辺国に圧力をかけ、領空通過の許可を取り消させようとしたと非難していた。さらに中国は現地時間の5月1日、アフリカ諸国向けの関税ゼロ政策をエスワティニを除く全域に適用しており、外交上の対立が経済面にも及んでいたことがうかがえる。

今回の退避勧告についても、犯罪対策という名目とは別に、台湾との関係を維持するエスワティニへの外交的な圧力という側面があるのではないか、という見方が出ている。中国政府による自国民への渡航自粛・退避勧告は、特定の国との関係が悪化した際に発動されることがあり、経済関係や外交関係を揺さぶる手段として使われてきたという指摘がある。

日本にとっての意味

今回の一件は、中国が台湾を承認する国に対してどのような圧力をかけうるかを示す事例として読める。日本は台湾と正式な外交関係を持たないが、経済・人的往来では緊密な関係にあり、台湾有事や台湾を巡る中国の圧力のあり方は、日本の安全保障論議で繰り返し取り上げられてきたテーマである。中国が承認国の飛行許可への働きかけや関税措置、さらには自国民の退避勧告といった手段を組み合わせて圧力をかける様子は、外交・経済・治安対策が一体となった対応が取られている実例として注目に値する。

日本にとってエスワティニとの直接の経済的つながりは限定的だが、中国が「一つの中国」原則を維持するためにどこまでの手段を用いるかを見ておくことは、台湾を巡る地域情勢を評価するうえで参考になる。各国が自国民に出す退避勧告や渡航情報が、治安上の判断だけでなく外交上の意図を帯びうることは、日本の外務省が出す海外安全情報を読むときの見方にもつながる。