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稼働サウナを劇場に転用 エディンバラ演劇祭で「サウナシアター」

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デザイン事務所のスタジオ・スリー・シクスティ(Studio Three Sixty)が、実際にサウナとして稼働する仮設の劇場「サウナシアター(Sauna Theatre)」を制作した。舞台芸術の祭典エディンバラ・フリンジ演劇祭の会期中、劇場として使われている。

何が起きたのか

設計したのは、同事務所のディレクターで、サウナ・セッションズ・アーツクラブ(Sauna Sessions Arts Club)の共同クリエイティブディレクターも務めるルーシー・オズボーン(Lucy Osborne)氏。稼働するサウナに約80人を収容し、公演を上演できる。

「サウナシアターは新しい種類の文化空間として構想した。英国初の目的建設によるサウナ・アーツセンターであり、英国最大のサウナでもある」とオズボーン氏はDezeenに語った。「照明、サラウンド音響、演目への集中という劇場の道具立てで、サウナの馴染みある建築を揺さぶるものだ」

会場はエディンバラ中心部のサマーホール・アーツ(Summerhall Arts)裏庭で、フリンジ演劇祭の会期を通じて公演を行う。演目はサウナマスターが主導する温浴の儀式「アウフグース(Aufguss)」を土台にしたものと、ダンス主体の「レイブ」セッションだ。

内部は伝統的なサウナを思わせる造りで、アユース材のベンチが3基の大型サウナストーブを馬蹄形に囲む。「公演に求められる集中に適いながら、紛れもなくサウナだと感じられる部屋にしたかった」とオズボーン氏は言う。「形式張らず、温かく、社交的で、皆で共有する部屋にしたかった」。アユース材を選んだのは「触れると柔らかくひんやりした質感のある濃い色の木材」だからだという。

背景

サウナシアターを発案したのは、サウナ・セッションズ・アーツクラブを創設したオズボーン氏とジェームズ・グリーブ(James Grieve)氏。ノルウェーやスウェーデンでの仕事を通じてサウナ好きになった2人は、サウナに入るうちに劇場との共通点に気づいたという。「サウナも劇場も、見知らぬ者同士が強烈なライブ体験をリアルタイムで分かち合う共同の空間だ。どちらの場所にも、いまここに在ること、日常を一時停止することへの暗黙の了解がある」とオズボーン氏は語る。

2人が目指したのは巨大なサウナではなく、公演ごとに空間を変容させられる劇場照明を組み込んだ施設だ。「熱い部屋に演劇を持ち込むだけではない。心地よさを感じながら芸術を体験する、新しい文化空間をつくろうとしている」とオズボーン氏。「窓のない暗転した空間を劇場照明だけで照らすので、雰囲気、感情の色調、色彩を完全にコントロールできる」

技術面の難所は、高温多湿の空間に照明と音響を持ち込むことだった。「従来の劇場機材をそのままサウナに置くことはできない。多くの部品は熱くなりすぎるか、温度と湿度に耐えられない」とオズボーン氏は言う。解決策は、サウナ環境に耐える機材と、天井に設けた6つのガラス窓の併用だった。部屋の上部に組んだ照明リグから、ガラス越しに光を注ぎ込む。「これで、公演中の熱と湿度を損なうことなく、劇場的な演出と雰囲気をサウナに持ち込める」

建物は解体して各地へ移設できる設計で、外観には明るいサイネージを掲げ、シャワー、更衣室、ロッカー、冷水のプランジプールなど付帯空間も備える。2人は、サウナシアターがサウナ未経験者への入口になり、演劇がウェルネス習慣の一部になりうることを示したいと考えている。「観客の多くが初めてのサウナ体験になると分かっている。それは身の引き締まる責任だ」とオズボーン氏。「よい演劇は、来たときとは違う人間になって世界へ送り出してくれる。それがサウナシアターへの私たちの希望だ。優れたアーティストが心地よい熱を使いこなし、私たちを魔法のような旅へ連れ出し、驚きと喜びと変化を残してくれることを」

日本にとっての意味

日本では2010年代後半からのサウナブームが定着し、演目の核であるアウフグースも急速に広がっている。日本サウナ・スパ協会などが関わる国内大会「アウフグース・チャンピオンシップ・ジャパン」が開かれ、世界大会(Aufguss WM)では2023年に日本代表チーム「WAT」が団体部門で優勝している。タオルで熱波を送るアウフグースは、音楽や物語性を伴うショーとして観客に披露される競技へと発展しており、「サウナは観るものでもある」という感覚は日本のサウナ愛好者にはすでに馴染みがある。

サウナシアターは、その発想を建築の側から突き詰めた事例だ。熱と湿度という劇場機材の天敵を、天井のガラス窓越しの照明という設計で解いた点は、温浴施設にエンターテインメント性を持たせようとする日本の事業者にも参考になる。解体・移設可能な仮設建築である点も、イベントや芸術祭にあわせた期間限定の温浴空間という展開を示唆している。