モザンビークの重鉱物砂採掘、マングローブ消失に中国系企業の関与か
モザンビーク中部ザンベジア州の海岸で、砂の採掘によってマングローブ林が急速に失われていることが、調査報道サイトMongabayの取材で分かった。現場は中国の大手鉱業グループ、済南域瀟集団(ジナン・ユーシャオ・グループ、Jinan Yuxiao Group)が一部出資する「モザンビーク・ヘビーサンド・カンパニーVIII」が管理する区域で、衛星画像の分析からは、砂採掘によって水路がふさがれた様子がうかがえるという。
何が起きたのか
マングローブの消失が確認されたのは、ザンベジ川河口デルタにある、世界有数の多様で豊かな河川デルタ生態系とされる区域だ。マングローブ林の消失を追跡する国際的な衛星監視プラットフォーム「グローバル・マングローブ・ウォッチ」が、この地域で2023年後半から異変を示す警報の増加を検知した。国際NGOウェットランズ・インターナショナルの地球観測専門家ラメルト・ヒラリデス氏が警報のパターンを分析した結果、自然の海岸浸食や暴風雨によるものではなく、人為的な活動が原因である可能性が高いと結論づけた。衛星画像を確認したところ、河口デルタの一つの水路が砂採掘活動によって閉ざされ、河口域と海のつながりが断たれている様子が写っていたという。この変化は2022年初めから2026年にかけて起きたとみられる。
済南域瀟集団は、モザンビークで採掘権益として50万ヘクタール以上、サッカー競技場70万面分を超える土地を保有すると主張している大手鉱業企業で、主にチタン鉱石を産出する重鉱物砂を対象に採掘を行っている。チタン鉱石は塗料やプラスチック、日焼け止めなど幅広い製品の原料になる。モザンビークの鉱業分野の透明性向上を訴える活動家ファティマ・ミンビレ氏は、同国沿岸部のほぼ全域にこうした重鉱物砂の採掘プロジェクトが存在し、その大半が中国系企業によるものだと指摘する。同氏は「これらの企業は、環境にも住民にも配慮せず破壊を続けている」と語った。
背景
マングローブは塩分を含む水域でも生育できるよう進化した特殊な樹木で、高潮や、モザンビークを頻繁に襲うサイクロンの威力を和らげる自然の防波堤として機能する。モザンビークは、東アフリカ最大となる約30万ヘクタールのマングローブ林を有する国で、インド洋に面した2700キロメートルの海岸線を持つ。2015年から2022年にかけてマングローブ林は減少傾向にあったが、その後は毎年純増が続いている。ただし、どの程度が植林事業によるものかは分かっていないという。
河口デルタは複数の河川が土砂を運び堆積させるため、重鉱物砂の含有濃度が高くなりやすい。モザンビーク地質鉱業協会のジョゼ・メンデス会長は、同国はイルメナイト(チタン鉱石の一種)に非常に恵まれていると説明する。ただし、こうした砂浜からの重鉱物採掘は海岸線の形を変え、堆積物を移動させる作業を伴う。河口域への海水の流入が断たれるなど水の流れが変わると、冠水した土壌の化学組成が変化し、マングローブが枯死する原因になりうるという。ミンビレ氏は、環境影響評価を実施しないまま進められているプロジェクトが少なくないと懸念を示している。モザンビークは天然資源管理の透明性向上を目指す国際的な枠組み「採取産業透明性イニシアチブ(EITI)」に2009年に加盟しているが、現場レベルでの監督が追いついていないとみられる。
日本にとっての意味
重鉱物砂から採れるチタン鉱石は、塗料やプラスチック、日焼け止めなどの原料になる資源で、日本の塗料や樹脂のメーカーも輸入したチタン原料に依存している。今回の調査は、こうした資源の採掘で中国資本の存在感がモザンビーク沿岸で拡大している実態を示すもので、資源調達の分散化を考えるうえで参考になる動きだ。
もう一つの論点は防災面にある。マングローブは高潮やサイクロンから沿岸集落を守る自然の緩衝帯であり、その喪失は気候災害への脆弱性を直接高める。モザンビークは毎年のようにサイクロンの被害を受ける国であり、開発と環境保全のバランスをどう取るかは、台風や高潮に備えて海岸防災林の整備を進めてきた日本の沿岸政策とも重なる論点だ。また、この記事は通信社を経由しない調査報道であるため、日本の一般メディアでは報じられにくい種類のニュースでもある。資源開発の陰で進む環境破壊や、現地の監督体制の弱さといった実態は、こうした一次報道を追わない限り見えてこない。