英ホートン・フェスティバル、2026年の野外アート5選
英ノーフォークの歴史ある邸宅ホートン・ホールの敷地で開かれた音楽フェスティバル「ホートン・フェスティバル」を、建築・デザイン誌のDezeenが現地取材し、印象的な野外アート作品5点を選んで紹介した。木材と茅葺きのパビリオンから、ビンテージのキャンピングカーを使ったレーザー作品まで、彫刻、建築、光、音の領域にまたがる作品が並ぶ。
何が起きたのか
1つ目は、設計スタジオのセラ・コレクティブとマイター&マンデーズが手がけた木材と茅葺きのパビリオン「ウォーター・タワー」だ。ホートン・ホールに現存する1772年の給水塔から着想を得た構造物で、スコットランドにある英国王立鳥類保護協会(RSPB)のヨシ原から持続可能な方法で刈り取ったヨシを材料に使い、再生型のデザインが生物多様性と伝統工芸の両方を支えられることを示した。会期後は解体され、毎年組み立て直されるフェスティバルの定番作品になる予定だ。
2つ目は、光のアーティスト、クリス・レビン氏によるレーザー作品「フル・ビーム」。クロムめっきを施したビンテージのフォルクスワーゲン製キャンピングカーを敷地内の湖に浮かべた再登場作品で、2025年の初披露から規模を広げた。光が公共空間を「静けさの瞬間」に変える力を追求してきた同氏の作品系譜に連なる。
3つ目は、アーティストのニコール・ゴードン氏とコー・ポン氏による作品で、回転するパネルを鏡面の円環状に吊り下げ、制御された光線を受け止めては撒き散らし、周囲の木々に反射をちらつかせた。
4つ目は、アーティストでDJのコール・スーパー氏によるコミッション作品。ホートン・ホールの敷地で伐採された木を組んだ屋外のリビングルームで、地域の人が集う「サードプレイス」の衰退とセレブリティ文化の台頭を主題にしながら、来場者が集まり交流する場として機能させた。
5つ目として、ベンニ・アラン氏による、周囲の木々に呼応して光る作品も取り上げられた。同氏は昨年のホートン・フェスティバルでも、光る天蓋を吊り下げた作品を手がけている。
背景
ホートン・フェスティバルは、イングランド東部ノーフォークのホートン・ホールの敷地で毎年開かれる音楽フェスティバルで、2026年は8月6日から9日まで開催された。音楽と並んでアートプログラムに力を入れており、彫刻、建築、光、音にまたがる新作と再登場作品のコミッションを敷地全体に展開している。
音楽フェスティバルの会場が建築やアートの発表の場を兼ねる動きは他にもあり、Dezeenはこれまでにバーニングマンの建築的なインスタレーションや、グラストンベリー・フェスティバルのパビリオンも取り上げてきた。今回のウォーター・タワーのように、歴史的な建物への参照と環境配慮型の素材調達を組み合わせた作品が、フェスティバルの呼び物として毎年再建されていく点は、仮設建築の新しい持続のかたちを示している。
日本にとっての意味
ウォーター・タワーが示した茅葺きと持続可能なヨシの調達という組み合わせは、日本の屋根文化と地続きの話題だ。日本の茅葺きはススキやヨシを材料とし、白川郷の合掌造りをはじめ各地の文化財を支えてきたが、茅葺きを請け負える職人は全国で200人ほどとされ、材料を採る茅場の減少も課題になっている。英国の若い設計スタジオが鳥類保護団体のヨシ原と組み、伝統素材を「再生型デザイン」として音楽フェスティバルの目玉に据えた事例は、茅葺きを保存の対象ではなく現代のデザイン素材として見せ直す手がかりになる。
また、歴史ある邸宅の敷地を舞台に、音楽とアート・建築のコミッションを一体で運営する興行のかたちは、城郭や庭園、旧財閥邸宅といった歴史的資産の活用を模索する日本の地域にも参考になる。毎年解体と再組み立てを繰り返す前提の仮設パビリオンという手法は、文化財の敷地に恒久的な構造物を建てにくい日本の制約とも相性がよい。