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スウェーデン総選挙前、美術館が反ファシズム展を開催

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スウェーデンのストックホルムにある現代美術施設ボニアーズ・コンストハルが、反ファシズムをテーマにした国際グループ展「The Defeated: The Aesthetics of Resistance 2026」を開催している。世界19人の作家が参加し、現地の11月8日まで続く。スウェーデンでは現地の9月13日に総選挙を控えており、開幕はその2週間前というタイミングだった。

何が起きたのか

展覧会のタイトルは、ドイツ系スウェーデン人の作家・劇作家ペーター・ヴァイス(1916〜1982年)が残した2つの作品、1948年刊行の「The Defeated(敗北者たち)」と、1975年から1981年にかけて全3巻で刊行された「The Aesthetics of Resistance(抵抗の美学)」から取られている。後者は第二次世界大戦前のヨーロッパ各国におけるファシズムへの抵抗を描いた作品で、今回の展覧会の出発点になっている。出展作には、本展のために新たに委嘱された8点の新作が含まれる。展覧会は同施設の芸術監督ヨアンナ・ノルディン氏、研究者キム・ウェスト氏、フランス人キュレーターのフランソワ・ピロン氏の3人が共同で企画した。

出展作品には、ウクライナの作家カテリーナ・リソヴェンコによる新作絵画「Madness of Fascism(ファシズムの狂気)」があり、人体の臓器を背景に「ファシスト」的な家族を描いている。作家自身は、ロシアの帝国主義を支持する人々の家族写真をSNS上で探して着想を得たと語っているが、描かれた人物は特定の家族に限らず、ファシズム的な考えを持つ白人家族なら誰にでも当てはまりうると説明している。レバノンの作家アリ・シェリは、イタリアの石造噴水の頭部とタイの首なし彫像の胴体を組み合わせた彫刻「The Summoner, Grafting」を出品した。このほか、ハメディン・カネとヴァレリー・オズフによる大型のテキスタイル作品は、19世紀の画家テオドール・ジェリコーの名画「メデューズ号の筏」を下敷きに、20世紀の解放運動の図像を織り込んでいる。会場にはヴァイス自身と、彼の妻で芸術上の協働者だったグニラ・パルムスティエルナ=ヴァイスの歴史的作品も展示されており、1966年の戯曲「Song from the Lusitanian Bogey」のために作られた廃品金属の人形「Bogey」(1967年)も含まれる。企画者のノルディン氏はThe Art Newspaperの取材に対し、「これらのテーマについて語ることが物議を醸すべきだとは思わない。むしろ強く必要とされている」と述べている。

背景

スウェーデンでは2022年以降、ウルフ・クリステション首相率いる中道右派の少数与党政権が、右派ポピュリズム政党のスウェーデン民主党の閣外協力を受けて運営されてきた。同党は移民政策で強硬な主張を掲げてきており、選挙結果次第では正式な連立相手となる可能性がある。ノルディン氏は、こうした流れを世界各地で新しい形のファシズムが台頭している動きの一部として位置づけ、本展を民主主義や基本的人権をめぐる議論の場にしたいと説明している。

ヴァイスの「抵抗の美学」は、第二次世界大戦前のヨーロッパで、ファシズムに対抗した人々の姿を描いた大部の小説で、英訳版を刊行したデューク大学出版局によれば、抑圧がどれほど激しくとも抵抗そのものに意味を見出し、政治的な行動や社会理解のための新しい手がかりを芸術に求めるべきだという主張が根底にあるとされる。本展はこの小説を共通の参照点として、各国の作家がそれぞれの文脈や表現手段で、今日における抵抗の美学とは何かを問い直す構成になっている。本展に合わせて哲学者や作家によるエッセイ集も制作されており、ロンドン大学バークベック校のエスター・レズリー氏らが寄稿している。また、ヴァイスが手がけた、スウェーデンのテキスタイル作家アンナ・カスパションを扱う前衛的なドキュメンタリー映画「The Isle of Bliss」も、ストックホルムのモデルナ・ムセート(近代美術館)で現地の9月27日まで併せて上映されている。

日本にとっての意味

選挙直前というタイミングをあえて選んで美術館が反ファシズムを正面から掲げ、企画者が民主主義や人権をめぐる議論の必要性を公然と語る。今回のボニアーズ・コンストハルの姿勢は、文化施設と政治的言論の距離の取り方という、日本でもたびたび議論になってきた問いを想起させる。日本の読者にとって、こうした美術館の動きは直接の実利には結びつかないかもしれないが、文化施設がどこまで政治的な発言をしてよいのかという問いを、他国の事例を通じて考える手がかりになる。