チェコの機械工場内にギャラリー、KOGAAが一角を改装
チェコ第2の都市ブルノの建築事務所KOGAAが、市内の工業用の小屋を展示・イベント空間「シュメラル・アート・ファクトリー」に改装した。ミントグリーンに塗られた金属が改修の目印だ。この小屋は、今も稼働するシュメラル機械工場群の敷地内にあり、工場地区を多様化させて街とのつながりを取り戻す計画の、最初の介入となる。
何が起きたのか
KOGAAは、倉庫が持つ工業的な質感を残したまま「新しい公共の生」を与えることに主眼を置いた。既存の鉄骨トラスを淡い緑に塗装し、それを枠組みとしてギャラリー空間を仕切っている。「より広いシュメラル複合施設の中で最初に完成した介入として、このギャラリーは段階的な変化の触媒として働く」と、KOGAA創設パートナーのアレクサンドラ・ゲオルゲスク氏はDezeenに語った。「さらに重要なのは、小さくても戦略的な介入が、見過ごされてきた産業建築の潜在力を解き放てると示したことだ。近隣の所有者や関係者が、既存の建物を障害ではなく機会として見るようになってほしい」
敷地の境界には、ブルノで初めて合法化されたグラフィティウォールが立ち、その裏手にはイベントや仮設展示に使える広い庭が確保された。庭の北端では、小屋の屋根を延長したキャノピーがミントグリーンの鉄骨に縁取られたパフォーマンススペースを覆い、同じ色の金属製の入り口扉が並ぶ。この緑は、かつて工場群の多くの建物を特徴づけていた緑色の仕上げへの目配せとして選ばれ、建物を換気する壁付けの煙突にも使われている。
内部は棟の頂部に設けたポリカーボネートの天窓から光が入る、細長い一室空間だ。もともとあった金属製の照明器具はLEDに換装され、淡い緑のトラスから吊り直された。中央にはトイレのブロックが置かれ、その手前に、隣接するシュメラル工場で製造された白い波形金属で覆われた長いバーカウンターが伸びる。「屋内バーの施工は、シュメラルのタービン職人たちが、日々の生産で使う材料と加工技術をそのまま使って行った」とゲオルゲスク氏。「小さな介入だが、この計画の理念を体現している。地元の職人技と既存の資源、最小限の介入によって新しい価値を作るということだ」。建物の南端には展示用の仮設の白壁が立てられ、トラスの下に渡した細い鋼材に作品を吊るせるようになっている。
背景
シュメラル・アート・ファクトリーの特徴は、廃工場の再利用ではなく、操業を続ける工場敷地の中にアートスペースを差し込んだ点にある。バーの施工を工場のタービン職人が担ったように、生産の現場と文化の場が同じ敷地で隣り合い、材料や技術まで共有する構図になっている。ギャラリーではすでに展覧会「ハイド・アンド・シーク」が開かれている。
産業建築の転用はDezeenが継続的に追うテーマで、関連する近年の事例としては、日本の豊島で使われなくなった工場をターコイズグリーンの色調のカフェ兼醸造所に変えたスキーマ建築計画の「豊島ファクトリー」が挙げられている。
日本にとっての意味
Dezeenがこの記事で並べて紹介したのが日本の事例、瀬戸内の豊島にあるスキーマ建築計画の工場転用だったように、産業建築を文化の場に変える手法は日本でも蓄積がある。犬島の銅製錬所跡を美術館にした犬島精錬所美術館のように、瀬戸内では産業遺産とアートを重ねる試みが地域再生の柱になってきた。
一方でブルノの事例が新しいのは、対象が「遺産」ではなくまだ動いている工場だという点だ。操業中の工場の一角を開き、職人の技術で内装を作り、地区全体を段階的に変えていく。この進め方は、工場の閉鎖や移転を待たずに産業地区へ人を呼び込みたい日本の工業都市にとって、小さく始める再生の手本になりうる。