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ロンドン科学博物館、BPとの約25年のスポンサー契約終了

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ロンドンの科学博物館(Science Museum)が、石油大手BPとの約25年間にわたるスポンサー契約を終了した。同館を運営するサイエンス・ミュージアム・グループ(Science Museum Group、SMG)は現地時間8月28日、契約が「合意された期間の終了」に伴い現地の8月31日で終わると発表した。長年続いた気候変動団体や教員らの批判が、契約終了の背景にある。

何が起きたのか

SMGは現地時間8月28日、BPとのパートナーシップが現地の8月31日をもって終了すると確認した。SMGの広報担当者は、スポンサー契約の条件や金額は「商業上の機密」だとしたうえで、この契約が10年契約で2028年まで続く予定だったとする一部報道は不正確だと述べた。BPと博物館の関係は約25年前にさかのぼり、かつてのエネルギー展示室(Energy Gallery)や2015年の企画展「コスモノーツ:宇宙時代の幕開け」への協賛などが含まれていた。

今回の契約終了は、化石燃料企業との関係を巡る博物館への批判が積み重なった末の結果だ。近年は、教員らが労働組合「全国教育組合(National Education Union、NEU)」の支援を受け、博物館がBPおよびインドの複合企業アダニ・グループ(Adani Group)傘下のアダニ・グリーン・エナジー(Adani Green Energy)との提携を終えるまで、学校の校外学習として博物館を訪れることをボイコットすると表明していた。アダニ・グリーン・エナジーは博物館の「エネルギー革命」展示室のスポンサーであり、アダニ・グループは世界最大級の民間石炭鉱山開発会社として知られる。

NEUのキャンペーンに参加する地理教員のダニエル・セルウィン(Daniel Selwyn)氏は、「学生、教員、科学者、そして幅広い人々による粘り強く筋の通った抵抗があったからこそ、この勝利は実現した」と語った。一方、キャンペーン団体カルチャー・アンステインド(Culture Unstained)のクリス・ギャラード(Chris Garrard)氏は、博物館が「ようやく正気を取り戻した」と歓迎しつつも、アダニとの関係が続く限り「部分的な勝利」に過ぎないとの見方を示した。

背景

化石燃料企業からのスポンサー収入を巡る論争は、科学博物館でこれまでも役員の辞任という形で表面化してきた。2021年には、数学者で番組司会者のハンナ・フライ(Hannah Fry)氏と科学者のジョー・フォスター(Jo Foster)氏が、アダニ・グリーン・エナジーからの協賛を受け入れる方針を巡る議論の末、SMG理事会を辞任した。気候科学者で元科学博物館館長のクリス・ラプリー(Chris Rapley)氏も、石油・ガス企業からの協賛を受け入れる姿勢に抗議し、諮問委員会を辞任している。

博物館は独自の持続可能性方針を持ち、スポンサー企業がパリ協定の目標にどれだけ沿っているかを評価しているという。パリ協定は2015年に採択された国際的な気候変動対策の枠組みで、締約国に対し、世界の気温上昇を産業革命前と比べて2度を十分に下回る水準に抑え、1.5度に抑える努力を追求することを求めている。2024年には、ノルウェーの石油・ガス企業エキノール(Equinor)の事業計画がパリ協定の目標に沿っていないことが内部文書で明らかになり、博物館の気候基準に反するとして協賛契約が打ち切られた経緯もある。

こうした動きは科学博物館だけにとどまらない。2025年10月には、博物館・美術館の専門家団体ミュージアムズ・アソシエーション(Museums Association)の会員が新しい倫理規定を承認し、化石燃料事業や人権侵害など環境・社会への害を伴う組織によるスポンサーシップから「移行する」よう博物館に求めている。イギリス国内では、大英博物館(British Museum)が2023年にBPと5000万ポンド規模、10年間の再開発支援パートナーシップを結んでおり、科学博物館がBPとの関係を絶ったことで、BPが協賛する主要な文化施設としては大英博物館だけが残る形になった。この契約にも、科学者や活動家からの抗議や批判が向けられてきた。

日本にとっての意味

日本でも、企業が博物館や美術館の展示や改修費用を協賛する仕組み自体はなじみがある。ただ、気候変動対策の遅れを理由にスポンサー契約が打ち切られたり、打ち切りを求める組織的な運動が起きたりする事例は、国内ではあまり知られていないとみられる。今回の科学博物館の対応は、欧州の文化機関において、企業からの資金提供の是非を気候変動という観点から審査する仕組みが実際に機能し得ることを示す一例といえる。今回のボイコット運動では、企業が協賛を通じて自社のイメージを高めようとする「イメージロンダリング」への批判が掲げられており、国内の文化機関や企業がスポンサーシップの在り方を検討する際にも、欧州でどのような基準や圧力が働いているかは参考材料になり得るだろう。