気候・災害

ラゴスで湿地急減、不動産開発が洪水リスク押し上げ

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ナイジェリアの商都ラゴスで、湿地や緑地の急速な喪失が洪水リスクを高めているとする研究結果が相次いでいる。現地の7月には激しい降雨で市内各地が冠水し、商業活動や交通が混乱した。専門家は気候変動に加え、急速な都市化がこの街の水害を悪化させていると指摘する。

何が起きたのか

現地の7月、断続的な豪雨によりラゴス市内の各所で鉄砲水が発生し、商業活動や交通に支障が出た。専門家は、人為的な気候変動によってラゴスの洪水リスクが高まっていると分析している。これに加え、近年の複数の研究は、急速な都市化がこの街の洪水を悪化させるもう一つの要因だと指摘している。

6月に発表された研究では、ラゴス市内の人口密集地区レッキについて、2015年から2025年までの衛星画像が分析された。その結果、この10年間で植生の被覆面積は13%減少し、水域も6%縮小した一方、自然の地表を覆う形で住宅地が10%拡大していた。研究チームは、これがこの地域の洪水発生の増加を招いていると結論づけた。

この研究は、ナイジェリアの沿岸都市で悪化する洪水と湿地の消失を結びつける一連の調査の最新のものだ。2月に発表された別の研究では、1984年から2023年にかけてラゴスの建築物・インフラの面積が38%拡大した一方、森林被覆は32%、水域は11%減少し、ラゴス大都市圏が本来持つ洪水緩衝能力を低下させていると指摘された。この研究チームは、植生と湿地の喪失が続けば、2050年までにラゴスの市街地の60%以上が深刻な洪水の影響を受けると予測している。

環境保護団体ワイルド・アフリカ(Wild Africa)の西アフリカ代表マーク・オフア氏は、こうした生態系の喪失の背景に不動産開発ブームがあると話す。「ラゴスはかつて広大な湿地とマングローブに囲まれていたが、今は郊外に行くとどこでも土地の埋め立てと建設が進んでいる」と述べた。国際的な科学者ネットワークであるワールド・ウェザー・アトリビューション(World Weather Attribution)の分析でも、雨水を吸収する湿地の上に住宅開発が野放図に広がっていることが、ラゴスのような低地の沿岸都市を高い洪水リスクにさらしていると結論づけられている。

現地の5月には、ナイジェリア国家緊急事態管理庁が、雨季のピークにあたる7月から9月にかけて鉄砲水の発生が見込まれるとして、ラゴス市内の15地区に洪水警報を出した。

背景

ラゴスはギニア湾に面した低地の都市で、周辺にはもともと広大な湿地やマングローブ林が広がっていた。湿地は大雨の際に水を一時的に蓄え、川や海への流出を緩やかにする「自然の緩衝材」として機能するとされる。人口2000万人規模ともいわれるナイジェリア最大の都市であるラゴスでは、人口増加と経済成長に伴って住宅や商業施設の需要が高まり、湿地を埋め立てて宅地に転換する開発が広がってきたとみられる。

洪水が人間の生活に与える影響についてはある程度記録が積み重なってきた一方、野生生物への影響はまだよく分かっていないという。2024年には、大規模な洪水の後、ナイジェリア北部の動物園でヘビや鳥類を含む動物の80%以上が施設外に逃げ出したとの報告があり、逃げ出したダチョウが近隣の住宅街を歩き回る様子が動画で拡散したこともあった。オフア氏は、今後の洪水を抑えるには湿地への侵食を取り締まる規制強化が欠かせないとし、政府がこうした地域を保護区に指定し、企業による埋め立てを止める必要があると訴える。「口先だけでなく行動に移すべきだ」と話している。

日本にとっての意味

急速な宅地開発が水を吸収してきた自然の地形を奪い、結果として水害リスクを高めるという構図は、ラゴスに限った話ではない。日本国内でも、かつての水田や湿地、遊水地だった土地が宅地や商業施設に転換され、大雨の際に浸水しやすくなったとされる地域は各地にある。国土交通省や自治体が近年、洪水浸水想定区域図やハザードマップの整備を進め、都市計画において自然の保水・遊水機能をどう残すかが議論されているのも、こうした背景と無縁ではない。

ラゴスの事例は、経済成長や人口集中が続く都市で開発規制が後手に回ると何が起きるかを示す具体例として参考になる。日本は堤防や排水ポンプなど治水インフラの整備水準が比較的高いが、近年は想定を超える豪雨が各地で相次いでいる。インフラに頼るだけでなく、湿地や遊水地など自然の防災機能をどう都市計画に組み込むかという発想は、日本の治水政策を考えるうえでも改めて示唆に富む論点といえる。