英国のPOORコレクティブ、トレリックタワー着想の絨毯発表
ロンドンのデザイン集団POOR Collectiveが、初の絨毯コレクション「Power」を発表した。ロンドンのブルータリズム建築を代表する集合住宅トレリックタワーに着想を得た平織りの絨毯2種で、9月のロンドン・デザイン・フェスティバルで展示される。地域社会の発展に軸足を置く社会派のデザイン集団にとって、初の量産デザイン製品となる。
何が起きたのか
Powerは、地元ロンドンの絨毯メーカー、フロア・ストーリーとの協業で生まれた。絨毯は2種で、それぞれエバーグリーン(緑系)とタンジェリン(オレンジ系)の2つの配色がある。経糸も緯糸もニュージーランド産ウールを使った平織りで、交差する幾何学模様は、建築家エルノー・ゴールドフィンガーが設計したトレリックタワーの角張った建築をかたどっている。絨毯はインドで手織りされた。
トレリックタワーは1972年に完成した西ロンドン・ゴルボーン・ロードの公営住宅で、その毀誉褒貶に満ちた歴史がコレクションの出発点になった。共同創設者でデザイナーのベン・スプライ氏はDezeenに対し「トレリックタワーは私たちが題材にするのに自然な選択だった。非常に強い視覚的アイデンティティを持っているから」と語る。「それだけでなく、あの建物に結びついた社会史と文化的な意味も理由だ。生涯を通じて実にさまざまな受け止められ方をしてきた建物だ」
「それがPOORにとって重要だと感じられた。私たちの仕事の多くは、場所やコミュニティについての思い込みに異を唱え、デザインがどう別の物語に貢献できるかを考えることだからだ」とスプライ氏は続けた。
制作はスプライ氏と、集団のメンバーであるアクマラル・ハッセン氏、ショーン・アダムズ氏、ラリー・ボッチウェイ氏、マット・ハーヴィー・アジェマン氏、そしてフロア・ストーリーのデザイナー、ジル・ソープ氏の全面的な協業だった。絨毯は9月12日から20日のロンドン・デザイン・フェスティバル期間中、フロア・ストーリーのロンドンのショールームでの展覧会で展示される。
背景
POOR Collectiveはこれまで、場所に根ざしたプロジェクトを中心に活動してきた。南ロンドンの球技コートを色彩豊かに改修したり、夜勤労働者が置かれた現実に目を向けさせる屋根付きパビリオンを設計したりといった仕事だ。Powerは、ブランドのために構想された初の量産製品となる。
スプライ氏は方向転換の意味をこう説明する。「POORは、デザインを身近にして人々の日常に届けることにずっと関心を持ってきた。自分たちのデザイン活動から生まれたものを、ずっと広い層に届けられる機会は、とてもわくわくする前進だと感じた」。依頼を受けて特定の場所のために作る仕事は「その場所にしか存在せず、比較的少数の人にしか体験されないこともある。製品には別の種類の届き方がある。人々の家に入り込み、日常の環境の一部になれる」と語った。
日本にとっての意味
トレリックタワーと同じ1972年に、東京では黒川紀章設計の中銀カプセルタワービルが完成している。メタボリズム建築の代表作だった同ビルは老朽化の末に2022年に解体されたが、23基のカプセルが取り外されて再生され、サンフランシスコ近代美術館に収蔵されるなど、建物への愛着はかたちを変えて生き続けている。賛否の分かれた戦後の集合住宅が、時を経て文化的なアイコンになり、デザインの題材として日常に戻ってくるという構図は、日英で響き合う。
解体を免れて現役の住宅であり続けるトレリックタワーと、解体されてもカプセル単位で保存された中銀カプセルタワービルは、対照的な道をたどった。建物そのものを残せない場合にも、その形や記憶をプロダクトとして暮らしの中に残すというPOOR Collectiveの手法は、名建築の記録と継承を考える日本の建築界や美術館にも一つの選択肢を示している。