英国、2026年夏の太陽光発電が過去最高 記録的猛暑と快晴で急増
英国で2026年6〜8月の太陽光発電量が880万メガワット時(8.8テラワット時)に達し、過去最高を記録した。気候データ専門メディアのカーボンブリーフ(Carbon Brief)の分析による。今年の英国は観測史上最も暑い夏となり、5月から8月にかけて熱波が5回発生するなど記録的な猛暑と快晴が続いたことが、太陽光発電の急増を後押しした。
何が起きたのか
カーボンブリーフの分析によると、2026年の夏(6〜8月)の太陽光発電量は前年同期比で23%増加し、2021年夏の2倍の水準になった。6月・7月・8月はいずれも月別の発電記録を更新し、特に7月は330万メガワット時(3.3テラワット時)と、単月として史上最多の発電量を記録した。この7月の発電量は、英国全体の電力需要の15%をまかなう規模だったという。なお、本記事の「英国」の発電量などの数値は、厳密には北アイルランドを除くグレートブリテン島(イングランド・スコットランド・ウェールズ)を指す。北アイルランドはアイルランド全島で運用される別の電力系統に属している。
英国気象庁(Met Office)によると、2026年の夏は日照時間が620時間を超え、統計史上6番目に日照の多い夏となった。特にイングランドとウェールズでは2番目に日照の多い夏だった。6月はイングランドで1884年の統計開始以来最も暑い6月となり、ウェールズと英国全体でも2番目に暑い6月を記録した。7月はイングランドとウェールズで1836年の統計開始以来最も乾燥した7月となり、ロンドンには月間を通じて雨が一滴も降らなかった地点もあったという。イングランドでは現地時間8月13日、ロンドンのキューガーデンで38.1度を観測した。気象庁は、この夏の平均気温の記録的な高さは気候変動によって130倍起きやすくなったとしている。
8月末時点で2026年の英国の太陽光発電量の累計は1700万メガワット時(17テラワット時)に達し、前年同期を13%上回った。太陽光発電事業者団体ソーラー・エナジーUK(Solar Energy UK)のクリス・ヒューイット最高経営責任者は、この記録更新について「晴天と、設備導入の継続的な拡大」によるものだと述べた。また、太陽光発電は、太陽光とバッテリーを備えた家庭の電気代を抑えただけでなく、日中の発電を天然ガス火力により多く頼っていた場合に比べ、電力価格全体を大きく押し下げる効果があったとも語っている。
設備の導入も急速に進んでいる。英国政府の統計では2025年第3四半期時点の太陽光発電の設備容量は21ギガワットで、前年比18%(3ギガワット)増加した。シェフィールド大学の集計では、現在の設備容量はおよそ24ギガワットに達しているという。2026年に入ってから新たに設置された太陽光設備は英国全体で約17万2000件に上り、7月だけでも1万9800件超の屋根置き太陽光パネルが設置された。これは2分に1件のペースに相当する。英国全体では現在、約170万世帯が太陽光パネルを設置している。屋根置きの住宅用太陽光が全設備容量の約29%を占めるという。
ユーティリティ・ビダー(Utility Bidder)の分析によれば、今夏26日間の熱波の期間中、屋根に太陽光パネルを設置した英国の世帯は合計で約8670万ポンドの電気代を節約できたと推計されている。なお、太陽光発電量が過去最高を記録した一方で、30分ごとの平均出力の記録は更新されず、現地時間2026年4月23日に記録した15.2ギガワットが最高値として残っている。
背景
英国はここ十数年、洋上風力を中心に再生可能エネルギー導入を進めてきた国として知られるが、太陽光発電の拡大も近年顕著になっている。緯度が高く日照条件は日本ほど恵まれていない英国だが、パネル価格の低下や屋根置き設備への補助制度、大規模太陽光発電所の開発によって設備容量が着実に積み上がってきたとされる。今回の記録更新は、単に晴天が続いたからというだけでなく、その晴天を受け止めるだけの発電設備がこの数年で大きく積み増されてきたことの結果だといえる。
また、今回の記録的猛暑そのものについて、英国気象庁は気候変動の影響でこうした高温がはるかに起きやすくなっていると分析している。太陽光パネルは高温になると発電効率がやや落ちる性質があるが、今夏のように日照時間が長く日射量そのものが多い場合には、効率低下分を上回る発電量の増加につながることが今回のデータからも裏付けられた形だ。
日本にとっての意味
日本も世界有数の太陽光発電導入国であり、住宅用太陽光の普及や電力市場での再生可能エネルギーの位置づけという点で英国の事例と重なる部分は多い。英国では家庭の太陽光とバッテリーの組み合わせが、猛暑による電力需要の増加時にも電気代を直接的に抑える効果を持つことが今回のデータで示された。日本でも近年、酷暑による夏場の電力需要ピークと電気料金の高騰が繰り返し課題になっており、屋根置き太陽光の普及率をどう高めるかは共通の政策テーマといえる。
さらに、英国では発電量が過去最高となった一方で、30分ごとの平均出力の記録は更新されなかった。日本でも太陽光の導入効果を語る際、年間・季節ごとの総発電量と、系統運用上重要になる出力のピークとを分けて捉える視点は、電力系統の安定運用を考えるうえで重要になる。英国の実例は、日照条件が必ずしも豊かでない国でも、設備投資の蓄積次第で太陽光が電力供給の重要な一角を占めうることを示しており、日本の太陽光政策の今後を考える材料として読む価値がある。