ロンドン、廃船改装の運河サウナ船が2週間ごとに移動運航
ロンドンの建築集団バッドウェザー(Badweather)が、全長17メートルの運河ボートを改装し、移動式の入浴施設「Soak(ソーク)」を開業した。薪焚きのサウナ、2つの水風呂、シャワー、更衣スペース、小さなバーを備え、最大12人が利用できる。ロンドンの水路沿いを2週間ごとに移動しながら営業する、同市初のオフグリッド(自給自足型)バスハウスだという。
何が起きたのか
Soakは上水道・電力網・下水道のいずれにもつながっていない。入浴に使う水は運河から直接くみ上げ、6段階のろ過と紫外線処理を経て使う。電気はソーラーパネルで発電して船内の蓄電池にため、サウナの熱は薪ストーブでまかなう。
出発点は、床が腐り水漏れした築20年の廃船同然のボートだった。鋼鉄の船体の大規模な修復を含め、改装にはおよそ40人が関わった。外装はクリーム色に黒と赤のディテールで塗り直され、側面には円形の舷窓が並ぶ。もともと約28センチだった開口部は約46センチと約81センチに拡大され、火のような赤い枠が船体に映える。
内部は船の細長い形に沿って並ぶ。来場者はまず、染色したマリン合板張りの暗い更衣・受付エリアに入り、淡い緑のタイルとステンレスの水風呂、天窓のある明るい浴室へ進む。船首のサウナは熱処理したアスペン材とアルダー材張りで、ベンチは脚で支えず、アルミの梁から吊り下げることで、すぼまる船体の中で重ねて配置できるようにした。
背景
プロジェクトを立ち上げたのは、バッドウェザー共同創設者のレオ・シックススミス氏と、シェフで元レストラン経営者のリカルド・コダッチ=ピサネッリ氏。一つの場所に固定されず、街の中を動き回る共同入浴の場を作りたかったという。シックススミス氏は「船の場所が変わるということは、この窓から見える景色が二度と同じではないということだ」とDezeenに語っている。
バッドウェザーは2019年にロンドンで設立された実験的な建築・舞台美術・デザインの集団で、ナイトクラブやフェスティバルの仮設建築などを手がけてきた。なお、Dezeenはこれまでにモントリオールの共同サウナ施設や、東京郊外の銭湯「狛江湯」のようなターコイズタイルの浴場も取り上げており、Soakはその系譜に連なる一件だ。
日本にとっての意味
共同入浴の文化は日本のお家芸だが、その担い手である銭湯は減り続けている。厚生労働省の衛生行政報告例によれば、一般公衆浴場は1989年度の約1万2000軒から2015年度には約4000軒まで減り、その後も減少が続く。維持費のかかる建物と土地を固定で構える経営の重さが、廃業の一因とされる。
Soakの答えは「建物を持たず、船で客のいる場所へ動く」だった。折からのサウナ人気で、日本でもテント式サウナや水辺のサウナ船といった小規模・可動式の試みが各地に現れている。水の浄化と自家発電でインフラから切り離した設計は、河川や港湾の多い日本の都市でも応用の余地がある発想といえる。