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石の外骨格が支える「世界初」の高層集合住宅、ロンドン北部に完成

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ロンドン北部の大通りフィンチリー・ロードに、火山岩の外骨格だけで支える集合住宅「ペトラ・ハイツ(Petra Heights)」が完成した。設計は建築事務所グループワーク、構造設計はエンジニアリング会社ウェブ・イェーツ。1000トンを超える石が、コンクリートと鉄骨に取って代わった。

何が起きたのか

建物は6階から10階建ての3棟で構成され、合わせて22戸の住戸と、1階のコロネード(列柱廊)の奥にガラス張りの店舗が入る。3棟すべてを、無筋の石でできた「はしご状」の外骨格が支える。コンクリートの耐震・耐風コアもコンクリート柱も鉄筋もなく、石が構造と外装を兼ねるため外装材も要らない。

ウェブ・イェーツ共同創設者のスティーブ・ウェブ氏は、建物の重量も風荷重もすべて石が受け持つと説明し、この解決策を「世界初」と呼ぶ。「もし石がなかったら、瓦礫の山になってしまう」とも語った。

柱と梁は合計572本で、最長のものは5メートル。シチリア産の玄武岩を下層階に、ノルウェー産のラルビカイトを上層階に使い、異なる火山岩の色をそろえるために化学洗浄で石の鉄分を酸化させた。この赤錆色が、周辺の歴史ある赤レンガの家並みになじむ。ノルウェーのルンズ採石場にとっては、1933年のオスロ公共図書館の柱以来およそ100年ぶりの構造用石材の供給だった。

背景

グループワークとウェブ・イェーツは15年にわたり、鉄鋼とコンクリートに代わる低炭素材料として石を確立しようとしてきた。両者を合わせると人類の排出量の16%を占めるとされ、構造用の石は、同じ国で採掘すれば建物上部構造の内包炭素を最大95%削減できるという。両社の前作で、スターリング賞の最終候補にもなった15クラーケンウェル・クローズは6階建てで、風対策にコンクリートコアを残していた。ペトラ・ハイツはそれを完全に取り除いた点が新しい。

英国の防火規制のもとでは、高さ18メートルを超える建物に大断面木材(マスティンバー)は使えないとされる。一方この外骨格は30階建てまで拡張でき、鉄骨造に比べ追加費用なしで排出を80%削減できるとの試算を両社は示す。今回の建物自体も、コンクリートの地下基礎や床スラブ、輸入石材を使いながら、材料と施工由来の炭素排出は同等の鉄筋コンクリート造より約32%少ないという。

プレハブの石モジュールを積み上げたエレベーターシャフトはわずか1日半で組み上がった。グループワーク創設者のアミン・タハ氏は、まず木材から始め、木材が使えない場所では内包炭素の少ない石を選ぶべきだと説く。英政府が2029年までに約束する新築150万戸を、コンクリート枠にレンガを張る従来型で建てることへの危機感が、その根底にある。

日本にとっての意味

構造の脱炭素という課題は日本も共有するが、答えの出し方が対照的だ。地震国の日本では石を積んで支える構造は主流になりにくく、代わりに木造の高層化が進む。大林組が2022年3月に横浜で竣工させた研修施設「Port Plus」は地上11階・高さ44.1メートルで、日本初の高層純木造耐火建築物となった。

ペトラ・ハイツが示すのは、その先の問いだ。防火規制で木材が使えない高さ、あるいは木材が向かない敷地で、次に選ぶ材料は何か。ロンドンの答えは「地場の石」だった。素材の選択肢は国の地質と地震条件で変わるにせよ、コンクリートコアをなくすだけで炭素排出が大きく減るという実測値は、中高層住宅を大量に建て続ける日本の建設業にも参照点になる。