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アアルト大学とバガブー、オレンジの皮と卵パックでベビーカー試作

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フィンランドのアアルト大学の学生が、オランダ・アムステルダムのベビーカーブランド、バガブー(Bugaboo)と組み、バイオ由来で生分解性の素材を使ったベビーカーを試作した。キャノピー(日よけ)は廃棄されるオレンジの皮から、座面のクッションは捨てられるはずだった卵パックから作られている。

何が起きたのか

きっかけは2025年のオランダのデザインイベント「ダッチ・デザイン・ウィーク」だった。アアルト大学が実験的なバイオ素材の展示を行ったところ、バガブーが大学に声をかけ、エスポーにある同大学の学際的な授業「Chemarts(ケマーツ)」の学生たちがバガブーのデザインチームと組むことになった。

出来上がったのは、車輪やシートベルトを含む黒い金属フレームはそのままに、それ以外を生分解性素材で仕立てた同ブランドのベビーカーだ。学生ごとに担当素材が分かれている。化学工学専攻のニコライ・クロチキンさんは、おがくずとメチルセルロース(植物のセルロース由来の増粘・乳化剤)の複合素材で砂色の背面パネルを作った。茶色の植物性レザーの座面カバーはアロイス・アウアーさんとレナータ・ハイルトジノワさんの担当で、防水性を高めるためにタールを塗った。

座面の内側には、ノーア・ライサルミさんのでんぷん由来フォームと、エリザベト・バイドゥーさんが廃棄予定の卵パックから作った再生繊維フォームを重ねてクッションにした。オレンジの皮から生まれた明るい茶色の織りキャノピーはセラヌル・ジレリさんの作で、かすかに柑橘の香りがするという。ユリア・サルッカさんは麻とリグニン(植物の細胞壁を支える主要な高分子の一つ)で同色のバイオレースのブランケットを編んだ。製品ラベルまでセルロース製だ。

背景

指導教員でデザイン講師のアンナ=マリー・ファン・デル・レイ氏は「時には、思いがけない、一見クレイジーなアイデアこそが新しい可能性を開き、大事な対話を始めるきっかけになる」とDezeenに語った。ただし完全な生分解性素材で防水性を確保するのは難しく、完全防水のバイオ素材ベビーカーはまだ道半ばだと認めている。

ベビーカーは現時点ではコンセプトモデルにとどまる。それでも、学生がバガブーのデザイン責任者やエンジニアと直接議論しながら素材を開発できたことは、実務の文脈で学ぶ機会になったと教員らは評価する。アアルト大学はバイオ素材研究で知られ、最近も北部オウルの沈没した貨物船から引き揚げた300年前の木材を糸に加工し、ドレスに編み上げるプロジェクトを発表している。

日本にとっての意味

木の繊維から新素材を生むという流れは、日本の製紙業界が力を入れる分野と重なる。パルプをナノレベルまでほぐした日本発の新素材セルロースナノファイバー(CNF)は、日本製紙が2015年に大人用紙おむつの機能性シートとして実用化し、王子ホールディングスも化粧品向け増粘剤などに展開している。経済産業省などが実用化を後押ししてきた経緯もあり、「木から日用品を作る」研究の蓄積では日本は先行組といえる。

一方でアアルト大学の試みが示すのは、素材開発を完成品の姿で見せる発信力だ。オレンジの皮のキャノピーという一見突飛な組み合わせが、企業を巻き込み、国際メディアに載る。素材の性能で勝負してきた日本のメーカーや大学にとって、誰もが知る製品の形で可能性を伝えるという見せ方は参考になるはずだ。