英デザイナー、ウエストウッドの余剰生地で「ファッション家具」制作
英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を修了したロンドン拠点のデザイナー、オリバー・スティフ氏が、ファッションデザインの言葉づかいや素材を家具に持ち込む彫刻的な家具シリーズを発表した。ファッションハウスのヴィヴィアン・ウエストウッドから提供されたデッドストック(余剰在庫)生地も使われている。
何が起きたのか
近作は「ハーマル・チェア」とサイドテーブルのセット、そして「ソーシャライト・チェア」。スティフ氏は「ファッションはスタイリングやイメージづくり、物語によって欲望とアイデンティティを生み出す術を知っている。家具も同じやり方で機能できるはずだ」とDezeenに語る。
ハーマル・チェアとサイドテーブルは、再生鋼管を溶接した骨組みに、持続可能な調達によるレザーの端材を張って手作業で仕上げた。着想源はコルセットだ。張力で体を成形し支えるコルセットの仕組みにならい、ステンレスの連続フレームにレザーを引き伸ばして張り、編み上げ紐のディテールを添えた。腰や臀部を思わせる輪郭で、椅子はほとんど身体のシルエットをまとう。
ソーシャライト・チェアは、FSC認証のシラカバ合板と再生金属で曲線的な低い座面の骨組みを作り、ウエストウッドから提供されたデッドストック生地をパッチワーク状に張った。「どんな素材が届くか正確には分からなかったから、予測不能性とともにデザインする感覚があった」とスティフ氏。完成後の撮影では、ウエストウッドのクリエイティブディレクター、アンドレアス・クロンターラー氏が最新コレクションの服を提供し、モデルが椅子とともに写った。
背景
ソーシャライト・チェアには、高級ファッションの生地は業界の文脈を離れた瞬間に価値を失うのか、という問いが込められている。スティフ氏によれば、提供された素材にはイタリアの機屋テッシルビエッラなどの高品質な生地が含まれていたが、端材は生産に不要になっただけで「高級品」から「廃棄物」へと呼び名が変わる。余剰素材を作り替えることで、素材の価値は元の用途を超えて続くと示したかったという。
持続可能性を軸にしつつも、リサイクル品らしい控えめな見た目に収める気はない、というのがスティフ氏の立場だ。サステナブルデザインは「責任ある姿勢を伝えるために、リサイクルらしく、質素で抑制的に見えなければならない」という思い込みに挑みたいのだと話す。同氏は2026年にロンドンで開かれた新人デザイナーの見本市「ニュー・デザイナーズ」で、ウルトラファブリクス・サステナブル・デザイン賞を受けた。
日本にとっての意味
高級生地の端材や売れ残りが一夜にして「ごみ」になる構図は、日本のファッション産業にも当てはまる。環境省の調査によれば、日本では年間約48万トンの衣類が廃棄されており、1日あたり大型トラック約130台分に相当する。売れ残りや残反(生地の余り)の扱いは、ブランドイメージ保護のための焼却処分が国際的に批判されて以降、業界全体の課題になっている。
スティフ氏の答えは、余剰素材を「我慢の素材」ではなく主役に据え、演劇的で華やかな一点物に仕立てることだった。尾州や桐生など高品質な生地産地を抱え、残反の活用がたびたび模索される日本にとって、廃棄物を高付加価値のデザインへ転じるこの発想は、産地とデザイナーの組み方の一つの手本になる。