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スペインの大手銀行、旧本社ビルを美術館に ベラスケスら1000点公開

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スペイン北部カンタブリア州の州都サンタンデールで、大手銀行バンコ・サンタンデールの旧本社ビルを改装した美術館「ファロ・サンタンデール」が現地の9月8日に開館した。ベラスケスやティツィアーノ、ルーカス・クラナッハ(父)、エル・グレコ、ゴヤ、ピカソらの作品を含む、約1000点の所蔵美術品を公開する。設計は英国の建築家デイヴィッド・チッパーフィールドが手がけた。

何が起きたのか

新美術館の建物は1795年建設のペレダ館。長年バンコ・サンタンデールの本社として使われてきた新古典主義様式の建物で、サンタンデール湾とカンタブリア山脈を望む立地にある。チッパーフィールドは建物の構造を保ちながら改修し、1万平方メートルの展示スペースを確保した。左右対称の正面玄関の間にあった中央のアーチにはガラスを入れ、両側の建物を行き来しやすくする踊り場を新たに設けた。

建物は10のフロアからなり、展示に充てられるのは4つのフロアで、核となるコレクションは4階に置かれる。上層階にはカフェとレストラン、屋上テラスがあり、地下には講堂がある。子ども向けの体験コーナーやVR展示、地元カンタブリア地方の現代美術や映像インスタレーションの展示室、貨幣コレクションの展示も備える。

開館記念展「バンコ・サンタンデール・コレクション傑作展」は美術史家マリア・ドロレス・ヒメネス=ブランコの企画で、風景画・静物画・肖像画・聖書主題の4部構成となっており、16世紀から21世紀までの作品が並ぶ。

開館記念の企画展では、フリーダ・カーロやディエゴ・リベラ、ホセ・クレメンテ・オロスコ、マリア・イスキエルドらの作品を含む「ゲルマン・サンタンデール・コレクション」の一部も紹介される。カーロの自画像の代表作「ディエゴが私の頭のなかに(Diego en mi pensamiento)」や「猿と一緒の自画像(Autorretrato con monos)」(いずれも1943年作)、リベラの「ナターシャ・ゲルマンの肖像」(1943年)などが並ぶ。会期は現地の2027年1月10日まで、その後は各地を巡回する予定という。

このコレクションをめぐっては、160点の作品の貸与契約が係争中だ。多くの作品はメキシコの国家文化財に指定されており、恒久的な国外持ち出しが認められていない。市民団体「ディフェンス・オブ・ザ・ゲルマン・コレクション」は契約の無効を求めて2026年7月に提訴した。館長のダニエル・ベガ・ペレスは「遅くとも2028年にはメキシコに戻る」と述べており、広報担当者はメキシコの法律に完全に準拠しているとしている。

企画展にはロンドンのフロイト美術館から巡回する「レオノーラ・キャリントン:症候的なシュルレアリスム」展もある。キャリントンは第二次世界大戦中、サンタンデールの療養所で過ごした経験があり、当時治療にあたった精神科医の自宅で最近見つかった1940年の作品「ヴィラ・ピラール」も出品される。

費用について、銀行は2018年に4000万ユーロと説明していたが、銀行と館長はその後の金額を明らかにしていない。資金はサンタンデール財団が拠出した。

背景

サンタンデールのコレクションがベラスケスやティツィアーノといった巨匠の作品を含むまでに膨らんだ背景には、スペインの大手銀行が合併・買収を重ねる過程で、傘下に入った旧行の所蔵品を引き継いできた経緯があるとみられる。これまでこのコレクションはマドリードの銀行本社内のギャラリーでしか見られず、一般の来館者にとって近づきにくい存在だった。今回の開館は、非公開に近かった企業コレクションを都市の公共空間へ開放する試みといえる。

チッパーフィールドは既存建物の構造をできる限り生かした改修で知られる建築家だ。

サンタンデールはこれまでフェリーの発着地として素通りされることが多い街だったが、2017年に建築家レンゾ・ピアノが設計した現代美術館「セントロ・ボティン」が開館して以降、美術愛好家が訪れる街へと変わりつつある。ファロ・サンタンデールの開館に加え、マドリードのソフィア王妃芸術センターの分館も2027年に開設予定で、地元では3施設による「アートの三角地帯」の形成が見込まれている。

日本にとっての意味

銀行や企業が所蔵美術品を専用施設で公開する仕組みは、日本にもなじみがある。ブリヂストンの美術コレクションを引き継ぐアーティゾン美術館、サントリー美術館、出光美術館、化粧品メーカーのポーラ美術館などは、いずれも企業が長年集めてきた美術品を公共に開放する企業美術館だ。

ゲルマン・コレクションをめぐる係争も、日本の読者にとって遠い話ではない。日本では文化財保護法に基づき「重要文化財」に指定された美術品の海外への恒久的な持ち出しが制限されており、指定文化財の国外流出や長期貸与をめぐる議論は国内でもたびたび起きている。メキシコが自国の文化遺産としてゲルマン・コレクションの扱いを争っている構図は、文化財の所有権と公共性、国境を越えた貸し借りの難しさという、日本の美術館運営者や研究者にも共通する論点を含んでいる。