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ハンガリー新政権、SANAA設計の新国立美術館計画を中止

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ハンガリーの新政権が、首都ブダペストの都市公園ヴァーロシュリゲト(Városliget)に建設予定だった新国立美術館の計画を中止した。設計を手がけていたのは、プリツカー賞を受賞した日本の建築家ユニットSANAA(妹島和世・西沢立衛)だった。現行の国立美術館の収蔵品は当面、これまで通りブダ王宮に置かれる見通しで、将来の移転先は専門家による検討に委ねられる。

何が起きたのか

現地で6月18日に公布された政令により、ヴァーロシュリゲトでの建設工事はすべて終了することになった。残っていた建設用地は、公園として整備し直されるという。新政権で交通・公共事業相に就いたダーヴィド・ヴィテージ氏は、新国立美術館の建物について「この都市公園には建設されない」との見解を示した。

SANAAが設計した新館は、延べ床面積5万平方メートル規模の大型施設として計画されていたが、ブダペスト市長や環境保護団体の反対を受け、2019年以降は事実上工事が止まっていた。ハンガリー国立美術館は1975年からドナウ川を挟んでブダ側の王宮内にあるが、ヴィテージ氏は王宮の設備について、近代的な美術館の長期運営や収蔵品の安全な保存に必要な水準を「十分に満たしていない」と述べた。もっとも移転先については「まだ決定していない」とし、今後あらためて専門的な検討を行うとしている。

背景

新国立美術館の計画は、ヴァーロシュリゲト一帯を文化地区として再整備する「リゲト計画」の目玉として進められてきたものだ。この10年余りの間に、ハンガリー音楽の家や、新しい建物に移ったハンガリー民族学博物館が完成し、近隣のブダペスト国立西洋美術館(Szépművészeti Múzeum)も既存建物の大規模改修を終えている。新国立美術館だけが、反対運動と工事の停滞のなかで宙に浮いた形になっていた。

計画を主導してきたのは、国立美術館とブダペスト国立西洋美術館の総館長を兼ねるラースロー・バーン氏だ。同氏は、1800年以降の作品をハンガリー美術と国際美術の区別なく新館にまとめて展示し、それ以前の古い時代の作品はブダペスト国立西洋美術館に集約する構想を描いていた。現在は逆に、国立美術館がハンガリー美術、ブダペスト国立西洋美術館が国際美術という分かれ方をしている(同館は、ルネサンス期から18世紀ごろまでの巨匠の絵画「オールドマスター(Old Master)」のコレクションで知られる)。バーン氏はハンガリーのニュースサイトHVGに対し、SANAAの設計を「世界水準の現代建築」と評し、別の場所での実現になお期待を寄せていると語った。

建設費はおよそ1000億フォリント(約3億ユーロ)と見積もられ、前政権のオルバーン・ヴィクトル首相のもとでは国費で賄う計画だった。2026年5月に発足したマジャール首相の新政権は、文化行政の重要課題としてこの問題に向き合っており、美術関係者からは、政府がすでに業界との対話を始めていることを評価する声も出ている。国際美術評論家連盟(AICA)ハンガリー支部会長のタマーシュ・ドン氏は「なぜハンガリー国立美術館はブダ王宮から出なければならないのか」と述べ、移転が本当に唯一の解決策なのか、公開の場での専門的な議論が必要だと訴えている。ブダペストのギャラリスト、エリカ・デアーク氏は、今のハンガリーには財政的にも機運としても、これほど大規模な建設を完成させる余力はないと受け止めている。

日本にとっての意味

今回の中止は、日本の建築家が手がけた海外の大型公共文化施設が、相手国の政権交代によって実現しないまま終わる事例として、建築関係者の関心を引きそうだ。SANAAは金沢21世紀美術館やルーブル・ランス分館などで国際的に高く評価されてきたユニットで、ブダペストの新館も国立美術館の顔となるはずだった。バーン氏が別の敷地での実現に望みをつないでいる以上、SANAAの案そのものが完全に消えたわけではないが、実現するかどうかは今後の場所選びと財政次第という不透明な状態が続く。

都市部の公園に大規模施設を建てる計画が、住民や環境団体の反対で長期間動かなくなるという構図は、日本の都市開発でしばしば見られるものと重なる。当面、ブダペストを訪れる日本の旅行者や美術ファンは、ハンガリー美術のコレクションを従来通りブダ王宮で見ることになり、王宮の全面改修が選ばれた場合はその期間だけで8年から10年を要する見通しだという。