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V&A美術館、ロンドン3施設が2日間ストで閉鎖

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英国の国立美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)で働く労働者およそ700人がストライキに入り、ロンドン市内の3つの施設が2日間にわたって閉鎖された。全職員の半分を超える規模のストで、美術館側は開始前に施設の閉鎖を決めた。労働者は「アマゾンのような」労働条件を理由に挙げているという。

何が起きたのか

今回のストライキに参加したのは、専門職・遺産(heritage)分野の労働者でつくる労働組合プロスペクト(Prospect)の遺産部門と、公務・商業サービス労働組合(PCS)に加盟する職員たちだ。両組合を合わせておよそ700人にのぼり、V&Aの全職員の半数を超えた。

美術館側は現地9月4日(金)の時点で、ロンドン市内の「V&Aイースト・ミュージアム」「イースト・ストアハウス」、そして子ども向け施設「ヤングV&A」(ベスナル・グリーン)の3施設を予防的に閉鎖した。閉鎖は現地の5日(土)まで続いた。ストライキの期間中、職員たちは3施設の外に集まり、公正な賃金と水の確保を求めるプラカードを掲げて声を上げた。

プロスペクトの遺産部門でナショナル・セクレタリーを務めるポーラ・ラモント氏は、Hyperallergicに寄せた声明で「3つのV&A施設を閉鎖するという決定は、私たちがこれまで主張してきたことを裏付けている。組合員は美術館の運営に欠かせない存在だ」と述べた。ラモント氏は、要求が容れられなければサウス・ケンジントンにある本館(flagship)を含めてさらにストライキを行う可能性があるとしている。今回のストで本館自体が閉鎖されたわけではない点には注意が必要だ。

背景

V&Aは英国の文化・メディア・スポーツ省(DCMS)が所管する国立博物館・美術館15館の一つで、いずれも常設展を無料で公開している。運営費は政府からの助成金(グラント・イン・エイド)と、商業活動や寄付による自主財源でまかなわれる。会計検査院(NAO)の報告によれば、15館への助成金はコロナ禍のピークから実質16%減った一方でコストは18%増えており、各館は商業収入への依存を強めている。賃上げ交渉が難航しやすい土壌があるとみられる。

労働者が掲げた「アマゾンのような」という表現は、プロスペクトがV&Aイースト・ストアハウスの労働環境をめぐって申し立てた集団苦情に由来する。同組合によれば、同施設のコレクション・アクセス・オフィサーには午前・午後の休憩が認められず、勤務中に水を飲んだりトイレに行ったりすることが難しかった。V&Aは8月7日に方針を改め、組合が求めていた1日2回の有給休憩を認めている。

組合側の要求は賃金にも及ぶ。プロスペクトは4%以上の賃上げ、祝日勤務の1.5倍支給、12か月以内のロンドン・リビング・ウェイジ認証の取得を求め、PCSはバンド6以上の職員への改善提案や、気温が30度に達した場合に公開エリアを閉じる全施設共通の方針などを掲げる。V&A側は2月から誠実に交渉してきたとし、給与総額で3.6%の引き上げを提示したと説明している。プロスペクトは技術職・専門職を中心に組織する労働組合で、遺産部門がロンドンのV&A4施設の職員を代表する。PCSは公務員を中心に幅広くカバーする労働組合であり、性格の異なる2つの組合が足並みをそろえてストライキに踏み切ったことは、美術館内での賃金・待遇への不満の広がりを示しているとみられる。

日本にとっての意味

V&Aは日本人旅行者にもロンドン観光の定番として知られる美術館だが、今回閉鎖されたのは多くの旅行者が「V&A」としてイメージするサウス・ケンジントンの本館ではない。閉鎖対象は「V&Aイースト・ミュージアム」と「イースト・ストアハウス」、そして子ども向けの「ヤングV&A」の3か所だった。この違いを知っておくと、今後同様の報道に接した際に混乱せずに済む。

ラモント氏の発言からは、労使交渉が今後こじれれば本館を含むさらなるストライキに発展する可能性も読み取れる。ロンドン旅行を計画する際には、直前まで開閉館情報が変わりうることを踏まえ、渡航前に美術館公式サイトの告知を確認する習慣が有効だろう。

また、V&Aのような常設展無料の運営モデルは日本にはあまり馴染みがなく、その分、運営コストと人件費の関係が労使間の摩擦として表面化しやすい構造とみられる。日本の美術館・博物館でも非正規雇用の職員が展示運営の現場を支えている例は少なくなく、海外の大規模美術館で起きている労働争議は、施設の華やかな展示の裏側にある雇用のあり方を考える手がかりにもなる。