気候・災害

アンゴラの旱魃で住民がナミビアへ 対応の差が生んだ明暗

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南部アンゴラのクネネ州で、深刻な旱魃を逃れて隣国ナミビアへ渡る住民が増えている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが公表した報告書によると、働ける世代の多くが村を離れ、高齢者だけが取り残される集落も出ている。同じ旱魃に見舞われながら、ナミビア側は支援策を打ち出したが、アンゴラ側はそれができなかった。この対応の差が、被害の大きさを分けたとみられる。

何が起きたのか

クネネ州は人口180万人を超え、住民の約75%が農村部に暮らし、牧畜と自給的な農業で生計を立ててきた。アムネスティが2021年に集めた証言によれば、村に残るのは体力が衰えた高齢者ばかりで、まだ動ける人たちはナミビアへ向かわざるを得なかったという。住民の一人は仮名で「ここには本当の飢えと渇きがある。だから村は人がいなくなった」と語った。

アムネスティの調査によれば、この地域の土地の約3割はすでに砂漠化で荒廃し、農業や牧畜で暮らしを立てられない住民が増えている。2023年から2024年にかけては強いエルニーニョ現象が発生し、この地域は100年以上で最悪とされる旱魃に見舞われた。

同じ旱魃でも、ナミビアは食料と水の支援を拡大し、家畜を持つ人々への支援や生活保障への投資を進めた一方、アンゴラ側は十分な対応ができなかった。アムネスティの移民問題担当弁護士で調査員でもあるヴィクター・ニャモリ氏は、アンゴラの人々にとって国境を越えることは生き延びるための問題になっていると話す。女性や子どもは移動先で性暴力や人身売買の危険にさらされているという。

背景

アンゴラとナミビアの国境はクネネ川に沿って引かれている。川の両岸には同じ言語を話し、同じ暮らし方をする人々が住み、家族が国境をまたいで分かれている場合もある。もともとこの地域では、旱魃のときに水と牧草を求めて国境を越えて移動する暮らし方が、社会や経済の一部として根づいていたとされる。しかし植民地時代に恣意的な形で国境が引かれ、両国の共同体が分断されたことで、こうした季節移動の慣習は失われていったとニャモリ氏は指摘する。旱魃のなかで再び川を越える人が出ている。この動きは、かつて水を求めて渡河していた移動と重なるものとみられる。

エルニーニョは太平洋の海面水温が周期的に上昇する現象で、世界各地の降水パターンに影響を及ぼすとされ、南部アフリカでは乾燥に傾きやすいという指摘がある。今回の旱魃はその影響が特に強く出た例とみられる。ただし、今回の事例は、自然現象の強さが同じでも被害の大きさが変わりうることを示している。

ナミビアは事前に支援制度を整えていたことで食料危機を一定程度防げたのに対し、アンゴラ側は備えが追いつかなかった。現在、国境から60キロ以内であればアンゴラの住民がナミビア側へ自由に移動できる二国間の取り決めがあるが、アムネスティはこれをより恒久的な仕組みにするようナミビア政府に求めている。気候科学者は、今後さらに規模の大きいエルニーニョが発達すると警告しており、同様の事態が繰り返される懸念がある。

日本にとっての意味

南部アフリカの旱魃は、気候変動が引き起こす人の移動という、今後世界各地で問題になりうるテーマの具体例として知っておく価値がある。難民の認定制度は本来、人種や政治的意見などを理由とした迫害から逃れる場合を想定したものであり、日本の難民認定制度もこの枠組みに立つとされる。旱魃や砂漠化を理由に国境を越える人々は、こうした従来の枠組みには当てはまりにくい。国際的にも受け皿となる法的な仕組みが整っていないという課題が、今回の事例からも見えてくる。

また、エルニーニョは日本の天候にも影響を及ぼすとされるが、同じ気象現象が南部アフリカでは人々の生存そのものを脅かす事態につながっている。この落差は、気候変動の影響が各国の経済力や行政の備えによって大きく異なることを示している。ナミビアとアンゴラの明暗は、災害への備えを平時からどれだけ整えておけるかが被害の規模を左右するという、日本の防災政策にも通じる教訓を含んでいる。