フーシ派、紅海要衝バブエルマンデブ海峡に迫る モカ制圧で数万人避難
イランに支援されたフーシ派の武装勢力が、イエメン紅海沿岸の港町モカと、イエメン沖のマイユーン島(Mayun、ペリム島とも)を相次いで制圧した。戦闘の激化で国内では数万人が住まいを追われ、さらに約1400人が対岸のジブチへ逃れた。紅海の出入り口にあたるバブエルマンデブ海峡の陸側の勢力図が変わりつつある。
何が起きたのか
現地時間の9月10日、フーシ派は紅海沿岸の港町モカを制圧した。翌11日には、イエメン沖のマイユーン島も掌握したと、複数の関係者が明らかにした。両地点はバブエルマンデブ海峡沿いにあり、フーシ派の勢力圏が海峡の中心部まで広がったことになる。
国際移住機関(IOM)は現地時間の12日、7月以降にイエメン国内で少なくとも7万6000人が避難したと発表した。数日前の時点では4万6000人だったといい、戦闘の激化とともに避難者数が急増している。
アデンでは、モカから逃れてきた人々を近隣住民が自宅に受け入れる動きも起きた。モカのアル・ハウハ地区から家族と逃げたアラー・アリ・サレム氏は「取り乱してパニックのままバイクで走り出した」と振り返り、逃げる途中でバイクが転倒し、家族全員がけがをしたと語った。アデンの親族宅に身を寄せたドゥラ・アリ・ハッサン氏も、兵士が撤退を叫ぶ中で銃弾が飛び交う様子を目撃したと述べた。
現地時間12日、ジブチのイリヤス・ムーサ・ダワレ経済財務相は、24時間で約1400人がイエメンからジブチへ到着したと明らかにした。ジブチはイエメンの対岸にあり、紅海の入り口にあたるバブエルマンデブ海峡に面している。国際移住機関の担当者は、女性や子どもといった弱い立場の人々がオボックの海岸に到着しており、今後も増える見通しだと述べた。
背景
イエメンでは、フーシ派と政府側との内戦が長期化している。フーシ派はすでに首都サヌアや西部の要衝ホデイダなど北部の広い地域を掌握しており、モカとマイユーン島の制圧は、その勢力圏を紅海南端の要衝バブエルマンデブ海峡にまで押し広げる動きとみられる。
バブエルマンデブ海峡は紅海とアデン湾を結ぶ狭い海峡で、スエズ運河へ向かう船舶にとって欠かせない通り道になっている。この海峡は、ホルムズ海峡がイランの脅威にさらされた際、サウジアラビア産原油をアジアへ運ぶ代替ルートとして重要な役割を果たしてきた。ただし、フーシ派によるサウジ関連タンカーへの攻撃で、この代替ルートとしての安全性はすでに大きく損なわれているという。
フーシ派は、サウジアラビア関連の海運に対する禁輸措置の対象に含まれない船舶については引き続き安全だと船主側に説明しているとされる。もっとも、地上の勢力図が海峡の目と鼻の先まで及んだことで、船舶側の警戒が強まる可能性がある。
日本にとっての意味
日本の海運各社は、紅海での攻撃を受けて、多くの船をスエズ運河から迂回させ、アフリカ南端の喜望峰を回る航路に切り替えてきた。今回明らかになったのは、船舶への攻撃だけでなく、海峡の陸側の支配そのものがフーシ派側に傾きつつあるという事実だ。
海峡の陸側を抑える勢力が変われば、船舶への攻撃が一時的に収まったとしても、航路の安全性を左右する構図そのものが変わってしまう。喜望峰迂回が短期的な回避策ではなく、当面続く前提として定着していく可能性がある。日本にとっては、輸入品が届くまでの日数が延び、燃料費を含む輸送コストがかさむ状態が長引くことを意味する。