EU、カナダを「准加盟国」とする案 フォンデアライエン氏が提案
欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、現地時間の9月16日、欧州議会で行った年次の施政方針演説(State of the Union)で、カナダをEUの「准加盟国(associate member)」とする新たな関係の構築を提案した。実現すればEUとして初めての地位となる。具体的な制度設計は示されていない。
何が起きたのか
フォンデアライエン氏は演説で、カナダのマーク・カーニー首相と協力し、EUとカナダの関係を最大限に引き上げたい考えを示した。その一環として「カナダがEUの最初の准加盟国となる道を開くことについて、あなた方と取り組みたい」と述べた。
協力を想定する分野として、エネルギー、重要鉱物、電池、人工知能、量子技術、サイバーセキュリティ、経済安全保障を挙げた。ただし准加盟国という地位が具体的にどんな権利や義務を伴うのか、どんな制度的な取り決めが必要になるのかについては説明がなかった。フォンデアライエン氏は、地政学的・経済的な課題が増す中でEUの対外関係を根本的に見直す必要があると訴えた。
背景
なぜ今、准加盟という新しい枠組みが浮上したのか。演説でフォンデアライエン氏が強く警戒したのは、重要鉱物をめぐる中国依存だった。多くの品目で中国への依存度が8割を超え、一部のレアアースでは9割に達すると説明した。さらに対中貿易赤字が1日あたり約10億ユーロに上ると指摘し、EUと中国の貿易関係が岐路にあるとの認識を示した。
EUはこれまでも、将来の加盟を目指す国向けの候補国制度や、非加盟国との自由貿易協定など、様々な対外関係の枠組みを持ってきた。しかし、EU条約上「准加盟国」という地位の規定はない。今回の提案は、正式加盟でも通常の貿易協定でもない、その中間に位置する新しい関係を模索する試みとみられる。
カナダが最初の候補として名指しされた背景には、両者が民主主義や市場経済といった価値観を共有し、エネルギー安全保障や重要鉱物の確保、AIの安全性といった戦略分野で協力を強めたいという思惑があるとみられる。EUが従来の貿易相手国という関係を超えて、より踏み込んだ枠組みを必要とするほど、国際情勢の緊張が高まっているという見方もできる。
日本にとっての意味
日本とEUはすでに2019年発効の経済連携協定(EPA)と、政治・安全保障分野の協力を定めた戦略的パートナーシップ協定(SPA)を結んでいる。EUが今回、正式加盟でも通常の協定でもない「准加盟」という新しい階層を検討し始めたことは、日本とEUの関係が将来どんな形に発展しうるかを考える手がかりになる。
フォンデアライエン氏が協力分野として挙げたエネルギー、重要鉱物、電池、AI、量子技術、サイバーセキュリティは、いずれも日本とEUがすでに個別の対話や協力の枠組みを持つ分野と重なる。この准加盟という仕組みがカナダに限った特例なのか、他の「価値観を共有する」パートナーにも将来開かれうるものなのかは、今回の演説からはまだ読み取れない。
ただ、EU側が対外関係の設計を見直し始めたこと自体は、EUと経済・安全保障の両面でつながりを持つ日本にとっても注視する価値がある。特に重要鉱物やAIをめぐる対中依存への懸念は、資源の多くを輸入に頼る日本が抱える課題とも重なる部分がある。