バタシー発電所再開発、最終フェーズ計画を見直し
ロンドンのテムズ川沿いで進むバタシー発電所の再開発について、設計事務所スタジオ・エグレット・ウェストが、残された敷地の新しいマスタープランを承認申請した。2008年に描かれた計画を書き換え、大きな街区を小さな建物の集まりに分けて、歩いて通り抜けられる場所にするという。
何が起きたのか
申請の対象は、開発全体のうち残っている約6.5ヘクタールの跡地だ。産業用途のまま使われずにきた土地で、新しい計画では住宅・商業・レジャーの用途に延べ約30万平方メートルを充てる。
書き換えられるのは、ウルグアイ出身の建築家ラファエル・ヴィニオリが2008年にまとめた約17ヘクタールのマスタープランである。ヴィニオリの当初案は、英国の指定建造物であるバタシー発電所を中心に据えた複合開発だった。発電所そのものは設計事務所ウィルキンソン・エアの手で住宅・オフィス・商業施設に転用されている。
新しい案は公開協議を受けて構想されたと同事務所は説明する。協議では、事業が始まってからの「都市での暮らし方、働き方、余暇の過ごし方の大きな変化」が浮かび上がったという。
「見直したマスタープランは、バタシー発電所の物語の前半の成功の上に立つもので、住宅、職場、商業、レジャーをさらに生み出す機会をつくる」と、共同創業者のデイヴィッド・ウェスト氏は述べた。
「これからの各段階は、もっと通り抜けやすく、包摂的で、興味をそそるものになる。遊び心と芸術性があり、生きものの多様性に富んだ公共空間の網が広がる」
「新しい構想は意図して柔軟にしてある。偶然の入り込む余地を残しながら、これまでの道のりで学んだことに応え、変化にも耐えられるようにした」とも語っている。
背景
具体的な変更点は、残る各段階を小さな建物のクラスターに分け、街路と中庭の網でつなぐことだ。完成予想図には、住宅や文化施設、商業空間が入る高層棟が並ぶ。細部はまだ詰まっていない。棟のあいだには植栽のある歩道と屋外の座席が置かれる。
新たな緑地も設けられ、バタシー発電所の開発と周辺のナイン・エルムズ地区をつなぐ。指定建造物である発電所と新しい建物群のあいだで、視覚的なつながりを強めることも計画に盛り込まれた。
将来の段階のうち一つは、すでに建築許可を得ている。ワンズワース区と組んで公営住宅200戸を供給する計画だ。
再開発はすでにおよそ半分が終わっている。2200戸を超える住宅と、約7万4000平方メートルのオフィスが完成した。その中には、フォスター・アンド・パートナーズが設計した曲面のオフィス棟と、同じ事務所が手がけた住宅棟の上に2万3000株の植物を載せた屋上庭園が含まれる。
日本にとっての意味
書き換えられる側の計画を描いたラファエル・ヴィニオリは、日本の読者にとって他人ではない。1989年の国際コンペで最優秀に選ばれ、1996年に竣工した東京国際フォーラムの設計者である。ウルグアイに生まれニューヨークで活動した同氏は2023年3月に78歳で亡くなった。東京の作品は完成した姿のまま建ち続け、ロンドンの計画のほうは未完の部分が別の事務所の手で描き直される。
長い開発という点では、東京にも比べるものがある。森ビルの麻布台ヒルズは、地元に街づくり協議会ができた1989年から数えて34年後の2023年11月に開業した。ヴィニオリが東京国際フォーラムのコンペを勝ったのと同じ年に動き出した事業だ。都市計画が決まったのは2017年、再開発組合の設立認可が2018年3月、着工が2019年8月だった。
バタシーで起きたのは、ちょうどその途中に当たる段階での判断である。2008年の計画のうち手つかずで残っていた部分について、公開協議で浮かんだ暮らし方・働き方・余暇の変化を理由に、設計そのものを描き直して申請し直した。街区を小さく割り、通り抜けを増やすという方向も、この十数年で変わった街の歩かれ方に合わせたものといえる。
大規模な再開発では、計画を固める時点と、最後の棟が建ち上がる時点とのあいだが10年、20年と開く。その間に人の暮らしは変わる。固めた計画をそのまま完遂するのか、途中で計画を開いて描き直すのか。日本でも同じ長さの事業が同時に何本も走っており、バタシーの申請は後者が実際に取られうることを示している。