バレンシアに新中央駅計画、RSHPとERREが曲面屋根案発表
スペイン・バレンシアの新しい中央駅の計画が公表された。設計は建築事務所RSHPとERRE。線路を地下に移し、地上に空いた帯を公園と広場にして、市街に返すという構想だ。駅そのものは壁を持たず、うねるような曲面の屋根に覆われる。
何が起きたのか
計画をまとめたのは、RSHPとERREにエンジニアリング会社セネールを加えた設計陣だ。完成すればバレンシア中央駅は市の鉄道の要となり、既存の北駅とつながる。
高速鉄道、近郊列車、地下鉄はいずれも地下に入る。その分だけ地上に余地が生まれ、設計陣が「緑の軸」と呼ぶ線状の公園がつくられる。
いま市内に引き込まれている線路は、街を分断したまま地上を走っている。RSHPのディレクター、サイモン・スミッソン氏は「市内に入る線路を地下に埋めることは、バレンシアにとって変革になる。街をつなぎ直せる」と述べた。
ERREもDezeenの取材に対し、線路を地下に移せばその状態を逆転させられるとしたうえで、「空間を人々に返し、歩くこと、自転車に乗ること、緑、そして公共の暮らしのための新しい場所をつくることができる」と語った。
背景
完成予想図が示すバレンシア中央駅は、壁を持たない構造物だ。いくつも連なる曲面の屋根が覆い、その姿は歴史ある北駅を思わせる。
屋根は光と空気を下のホームへ通す骨組みになっている。RSHPとERREは、この設計によって建物が「地下にいるように感じられない」ものになると説明する。
地上には広場が設けられ、新しい駅と既存の北駅をつなぐ。北駅も今回の開発の一環として改修される予定だ。
「私たちにとって最も大切な仕草の一つは、ただ場所を与えることだ」と、ERREの担当建築家たちは説明した。
「外壁を開き、二つの駅のあいだに新しい広場をつくることで、歴史ある建物はふたたび呼吸し、街の中でその存在をまるごと取り戻せる」とも述べている。
RSHPのアソシエイトディレクター、アイノア・アブレウ・ディアス氏は「私たちは、いちばん深いところにあるホームまで日の光と自然の風、そして外の眺めが届くよう、駅の箱をできるかぎり開くことに集中した」と語った。
同氏によれば、工事を速めるためにモジュール工法が使われる。ただし完成時期はまだ公表されていない。
「私たちの多くのプロジェクトと同じように、バレンシアでも軽量のモジュール式の屋根と、高度に体系化された駅を提案している」とディアス氏は言う。
「これによって工事は速くなり、近隣への影響は小さくなり、建設廃棄物は減る。循環型経済の考え方にも沿い、建物の一生を通じた炭素の大幅な削減を目指せる」
日本にとっての意味
線路を地下に移して、地上に空いた帯を人に返す。日本にはこれを「連続立体交差事業」と呼ぶ制度がある。国土交通省の説明では、鉄道を高架化または地下化して多数の踏切を一度に取り除き、渋滞と事故を解消するとともに、鉄道によって分断された市街地を一体化することが狙いだ。
その中でも、地上に残った帯の使い方まで含めて形になったのが東京の下北沢だ。小田急小田原線の代々木上原から梅ヶ丘までの約2.2キロメートルが地下に切り替わったのは2013年3月23日の初電から。東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅が地下駅になり、踏切9カ所が消えた。複々線での運行が始まったのは2018年3月3日である。
地上に残ったのは、全長約1.7キロメートルの細長い土地だった。小田急電鉄はここを13のエリアに分け、宿泊施設や店舗、緑地、広場を並べた「下北線路街」として整備し、2022年5月28日に全面開業させた。総事業費はおよそ90億円とされる。
バレンシアの計画と重なるところは多い。地下化で空いた帯を線状の公共空間にすること。そして古い駅の扱いだ。バレンシアでは新駅と北駅のあいだに広場を置き、北駅そのものも改修して、外壁を開くことで街との関係を取り戻そうとしている。下北沢でも、地下化のあとに残された地上部が駅前の歩行空間として作り直された。
違いは規模と段取りにある。バレンシアは高速鉄道と近郊列車、地下鉄をまとめて地下に入れ、地上の使い方を最初から「緑の軸」として設計に織り込んでいる。下北沢では地下化が先に完了し、跡地の使い道は後から詰められた。完成までの時間も長い。地下化から線路街の全面開業まで9年かかっている。
バレンシアの完成時期はまだ公表されていない。設計陣はモジュール工法によって工事が速くなり、近隣への影響も小さくなると説明している。地上の使い道をどこまで先に決めておけるかは、いま各地で連続立体交差事業を進めている日本の都市にとっても、そのまま自分たちの問題になる。