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クレラー・ミュラー美術館、ゴッホ絵画88点を1984年以来初めて全点公開

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オランダの国立公園内にあるクレラー・ミュラー美術館が、所蔵するフィンセント・ファン・ゴッホの絵画88点をすべて展示する企画展を現地時間2026年9月15日に開いた。同館がゴッホの絵画を一度に全点公開するのは1984年以来のことだという。会期は現地の2027年1月3日までで、普段は収蔵庫や貸し出し先にある作品も含め、この期間だけ全作がオッテルロの館内に集まっているとみられる。

何が起きたのか

企画展「Van Gogh, All Our Paintings」は、ゴッホの創作期(1881年から1890年までの約10年間)の作品を制作年代順に並べる従来の展示方法をとらない。似た題材や構図の作品を組み合わせ、向かい合わせに配置することで、時期の異なる作品の対話を生み出している。会場の冒頭には、夕日を背にした並木を描いた2点、1884年にオランダのヌエネンで描いた「夕日のポプラ並木」(Lane of Poplars at Sunset)と、1889年にフランス・サンレミで描いた「夕日の松林」(Pine Trees at Sunset)が並べて掛けられている。

展示はキリスト教の三つの徳とされる信仰・希望・隣人愛になぞらえて三つの区画に分けられている。ただし担当学芸員のレンスケ・コーエン・テルファールト氏は、第三の徳である隣人愛(charity)を「愛」(love)に置き換えて構成したという。この発想は、ゴッホが23歳だった1876年10月29日、ロンドン近郊リッチモンドのメソジスト教会で行った、記録に残る唯一の説教にちなんでいる。当時ゴッホは、ロンドン西部アイルワースの小さな学校で助教師として働いていた。

出品作には、「ジャガイモを食べる人々」のための習作(1885年)、「種を落とした四本のひまわり」(Four Sunflowers Gone to Seed、1887年)、「桃の花咲く木」(Pink Peach Trees、1888年)、「夜のカフェテラス」(1888年)、「夜のプロヴァンスの街道」(Country Road in Provence by Night、1890年)といった代表作が含まれる。中でも「落ち葉(レ・ザリスカン)」(Falling Leaves (Les Alyscamps)、1888年11月)は、劣化が進んでいるため20年以上一般公開されてこなかった作品で、今回が久々の展示となる。アルルの古代墓地の並木道を描いた4点の連作の一つで、画家仲間のポール・ゴーギャンが到着してまもない時期に、2人で並んで制作したものとされる。会期終了後、この絵は修復に入る予定で、今回はしばらく見られなくなる前の機会にあたる。

私的な作品として、「玉ねぎの皿のある静物」(Still Life with a Plate of Onions、1889年1月)も出品されている。ゴッホが自ら耳を傷つけてから数週間後に描いた作品で、健康の手引書やパイプ、たばことともに、手紙の封筒が描き込まれている。筆跡と消印から、この封筒はパリにいた弟テオから届いたものだとわかっている。この絵を紹介した記事の執筆者は、封筒の中身は、ゴッホが耳を傷つけた当日の1888年12月23日に受け取った手紙ではないかとみているが、これはあくまで一人の美術記者の見立てであり、確定した事実として館が示しているものではない。

背景

クレラー・ミュラー美術館のゴッホ作品は、実業家の妻で美術愛好家だったヘレーネ・クレラー・ミュラーが1908年から1930年にかけて買い集めたものである。個人の収集家によるゴッホ・コレクションとしては世界最大級とされ、画家の遺族が寄贈したアムステルダムのファン・ゴッホ美術館の所蔵数に次いで、美術館全体としても世界第2位の規模を誇る。ただし同館の展示スペースには通常、この88点のうち半分程度しか収まらず、残りは収蔵庫での保管や他館への貸し出しに回されている。

普段は分散している作品を一堂に集めるという今回の試みには、単なる話題づくりにとどまらず、学芸員が作品同士を新しい組み合わせで見せる研究的な意図があるとみられる。年代順ではなく主題で作品を結びつける手法には、画家の作風の変化そのものよりも、生涯を通じて繰り返し立ち返ったモチーフや心情を浮かび上がらせる狙いがあると考えられる。

日本にとっての意味

日本でゴッホの作品に接する機会は、その多くが海外の美術館から絵が来日する巡回展である。今回はその逆で、普段は貸し出し中だったり収蔵庫にしまわれていたりする作品まで含めて、現地でしか見られない形で一堂に集まっている。公開は現地の2027年1月3日までの期間限定である。しかも出品作の一つ「落ち葉(レ・ザリスカン)」は会期後に修復のため長期間展示から外れる見込みで、今このタイミングでオッテルロを訪れることの価値は小さくない。

美術館が所在するのはオランダの首都圏から離れた国立公園内で、東京から直行便がある都市からもさらに移動が必要な立地である。とはいえ、ゴッホ作品の所蔵数で世界有数とされるこの美術館が収蔵品の全体像を年代順ではないテーマ立てで見せる試みは、単に「名画を数多く見られる」以上の鑑賞のしかたを提示している。