ハンギングバスケットを収集品に ロンドンで10人のデザイナーが再解釈展
花を育てるために軒下へ吊るす、ありふれたハンギングバスケット。これを収集の対象になるデザイン作品として作り直す展示が、ロンドンで開かれている。10人のデザイナーが、溶かした工業用ポリスチレン廃材、レーザーで切った鋼、3Dプリントの器で応じた。
何が起きたのか
展示の名は「Hanging Baskets」。ロンドン・デザイン・フェスティバルの一環として、9月14日から20日まで、ファッションエージェンシー兼小売のAwaykinがハックニーに構えるスタジオで開かれている。
企画したのはデザインギャラリーのSlanchaだ。創業者のハーヴェイ・エヴァーソン氏とフィンドレー・マクドナルド氏が出した課題は、花を育てる吊り下げ式のプランターを、収集の対象になるデザイン作品として捉え直すことだった。
「10人の現代デザイナーを招き、ブラケット、吊り、器という同じゆるい枠組みから出発して、それぞれの素材と手法で解釈してもらった」とマクドナルド氏はDezeenに語った。
人選は素材で散らした。幅広い素材を扱う作り手を選んだので、出てくるものはまるで違うと分かっていたと同氏は言う。結果として、小さく洗練されたものから、大きく「どこか美しくも醜くもある」グロテスクなものまで、振れ幅の両端が並んだ。
背景
課題を最も押し広げたのは、ハンナ・ファストリッヒ氏の「Red Hot」だ。ブルータリズムに着想した作品で、板作りの陶のブロック2つを片持ちに組み、深い赤の釉薬をかけた。花を挿すのは小さな円錐形の皿だ。「質感がすごい。ほとんど木の樹皮のように見える」と同氏は評した。
素材の出どころで目を引くのは、フランス人デザイナーのニコラ・ザノーニ氏による壁掛け式の「Pyrofoam Planter」だ。工業用のポリスチレン廃材を溶かして作られ、有機的でカラメルのような形をしている。
古い時代を参照した作品もある。ロンドンを拠点とするコリーヌ・ル・カンヴェン氏の「Tri-diatreta」は、鋼の骨組みが3Dプリントの器3つを支える。参照元はローマのケージカップと、フランスのヴィラ・ケリロスにある新ギリシャ様式のブロンズ家具だ。「伝統的なハンギングバスケットのブラケットに近いのに、3Dプリントが外側にとんでもない模様を作っている」とマクドナルド氏は言う。ジャンプス・スタジオのマーサ・マクギン氏は、レーザー切断で中世の写本とゴシック建築に見られる形を再現した。
単体の吊り鉢にひねりを加えたのは3人。ロマン・バジル・ペトロ氏はアルミの板を積み重ね、デヴィッド・ボウイ「Space Oddity」の歌詞を刻んだ。マーク・スウィーニー氏は自身のPylonシリーズの再生シャンパンクーラーに、細いステンレスのボールチェーンを合わせている。
最も小さいのはSix Dots DesignとThisIsByronの作品で、どちらも管状のアルミを使った。シェヤン・リー氏はより大きく、より繊細な一点を作った。トネリコのフック、石の支え、アルミの管、そして吊られた陶の花器で構成される。組を締めくくるのはロンドンのスタジオAll Earsで、メープルとウォルナットを交互に重ねた縞の木ブロックに花器4つを収め、鎖を茎のように垂らした。
飾る花は、グラスゴーのStudio Kumariが生けた。濃い紫のユリ、アザミ、黄色いトマトが使われている。
Slanchaは先ごろ、ロンドンのデザイン界に新しい活力を注いでいる5つのギャラリーの一つとしてDezeenに挙げられた。今回の展示は、このスコットランド出身の2人が評価を確立した昨年のフェスティバル展示「The Car Boot Sale」から1年後にあたる。マクドナルド氏によれば、2人は成功の次は全く違うことをやるのがよいと考えたという。今年はHanging Basketsに加え、ザ・ホクストン・ホテルでも展示とポップアップショップを手がけている。
「今年戻ってくるのはかなり不安だった。何もかも昨年と比べられると分かっていたから」とマクドナルド氏は言う。「昨年とは比べようのない、それでいて語りとして同じくらい面白いものにしたかった」
日本にとっての意味
吊るした器を収集の対象として扱う枠組みは、日本にはすでにある。茶道の花入だ。
花入は飾り方によって掛花入、置花入、釣花入に分かれる。釣花入は床の天井や落掛から吊って使うもので、舟形などがあり、空間に浮かんでいるような姿そのものを見る。吊るすための釘にまで花蛭釘という名前が付いている。Slanchaが出した「ブラケット、吊り、器」という枠組みは、この分類とほとんど同じ骨格をしている。
違うのは、日本ではその骨格に序列まで備わっていることだ。花入は材質によって真、行、草に分けられる。真は胡銅や唐銅、唐物の青磁。行は釉薬のかかった和物の陶磁器。草は竹や籠、瓢、釉薬をかけない陶磁器である。マクドナルド氏が「振れ幅の両端」と呼んだ洗練と粗さの差は、日本では排除すべき差ではなく、格として整理されてきた。
個体に名前が付く点も同じだ。千利休は1590年、豊臣秀吉の小田原攻めに同行した際、伊豆韮山の竹で三つの花入を作ったと伝わる。「よなが」「園城寺」「尺八」と呼ばれ、園城寺は文化財として記録に残る。400年以上前に、壁や柱に掛ける形を含む花の器は、作り手の名と個体名を持つ収集品になっていた。
だから今回の展示が新しいのは、吊り鉢を作品にしたことそのものではない。出発点が逆なのだ。日本の花入は最初から床の間に飾る美術品として始まり、竹や籠という安い素材をあとから格の中に位置づけた。Slanchaが手をかけたのは、園芸用品店で売られている日用品のほうである。ファストリッヒ氏の赤い陶のブロックを「木の樹皮のよう」と評す目は、日本の見立ての作法に近い。