コンゴの銅山、太陽光とバッテリーでディーゼル発電から転換
コンゴ民主共和国(DRC)南部にあるアフリカ最大の銅山、カモア銅山で、30万枚を超える太陽光パネルと120基の蓄電池コンテナを備えた大規模施設が稼働を始めた。高価なディーゼル発電に頼ってきた鉱山会社が太陽光と蓄電池を組み合わせた安定電源に切り替える動きは、アフリカ全体で加速している。
何が起きたのか
カモア銅山で2026年8月に稼働を始めたこの太陽光・蓄電池施設は、アフリカで稼働する同種の設備としては最大級だという。運営会社カモア・コッパーによると、この電力は数百万リットル規模のディーゼル消費を置き換えており、発電コストはディーゼル発電機の5分の1以下に抑えられているという。設備を保有し電力を供給しているのは、分散型の再生可能エネルギー事業者、クロスバウンダリー・エナジーだ。
カモア・コッパーの経営責任者アネベル・オーストハイゼン氏は「DRCでは雨季が半年続くため太陽光は不向きだという見方が根強くあったが、実際には十分に機能している。発電機や電力輸入に頼る他の鉱山からも強い関心が寄せられている」と語った。
エネルギー専門の調査機関エンバーによると、アフリカ全体で2026年は17ギガワット分の太陽光発電設備が新設される見込みで、これは2025年比で45%の増加という。DRCだけでも2026年の太陽光導入量は1.7ギガワットに達し、前年比544%増、2023年時点の国全体の送電網容量の6割超に相当する規模になる見通しだ。太陽光の急増にともない、中国からの蓄電池輸入額も、2026年6月までの1年間で太陽光関連の輸入額を上回ったという。
背景
DRCは電気自動車(EV)の電池に欠かせないコバルトの世界最大の産出国であり、電気を通しやすいためインフラの電化に欠かせない銅では、アフリカ最大の生産国でもある。それにもかかわらず、世界銀行の統計では2024年時点で人口の22.5%しか電力を利用できておらず、これは世界でも低い水準に入るという。鉱業は石油・ガスを除くDRCの国内総生産(GDP)の4分の1以上を占める基幹産業だが、電力の不安定さが事業拡大の大きな足かせになっているとみられる。
DRCの送電網につながる電力はほぼすべてが水力発電で、国営電力会社SNELが供給している。コンゴ川の水力発電の潜在能力は約100ギガワットと見積もられているものの、実際に開発されているのはごく一部にとどまる。加えて、水力発電の拠点から南部の鉱山地帯までは1500キロメートル以上の送電が必要で、老朽化した送電網と限られた送電能力が電力を届けるうえでの制約になっているという。
クロスバウンダリー・エナジーのマット・ティラード最高経営責任者は、DRCの鉱業セクター全体でおよそ1ギガワットの電力不足があると推計されているとし、太陽光への関心はもはや理論上の話ではなく、実際に大規模な太陽光・蓄電池の調達につながっていると述べた。
カモア銅山はカナダのアイバンホー・マインズ、中国の紫金鉱業集団、DRC政府の合弁事業で、現在235メガワットの電力を必要としており、アフリカ最大級の銅精錬所の稼働もあって、今後5年でほぼ倍の450メガワットに達する見込みだという。SNELから受けている供給は100メガワットにとどまり、残りをどう賄うかが課題になっている。
日本にとっての意味
DRCは電池材料コバルトの世界最大の産地であり、アフリカ最大の銅生産国でもある。この記事が示すのは、電池材料の採掘・精錬を担う現地の鉱山会社自身が、電力不足とディーゼル価格の高騰という現実的な理由から太陽光と蓄電池への切り替えを進めているという構図だ。電池材料の供給網を扱う日本企業にとって、産地の電力事情は生産の安定性やコストに直結する要素であり、鉱山側のエネルギー転換の進み方は、コバルトや銅の調達戦略を考えるうえで無視できない材料になる。また、鉱山向けの蓄電池需要が中国からの輸入増加という形で表れている点は、電池関連のサプライチェーンをめぐる国際的な資材の流れを把握する手がかりにもなる。