イスラエルとモロッコ、相互に大使館開設で合意
イスラエルとモロッコの外相が現地時間9月16日、ニューヨークで米国の国連大使も交えて会談し、両国に大使館を相互に開設することで合意した。両国はすでに出先機関を置いているが、これを大使館に格上げし、大使を任命する方針という。ただ具体的な開設時期は示されていない。
何が起きたのか
イスラエル外務省の発表によると、会談では両国の外交関係を格上げし、現在の出先機関を大使館の水準に引き上げ、大使を任命することを改めて確認した。共同声明は、「モロッコとイスラエルの間に完全な外交的・平和的・友好的関係を樹立することは両国の共通の利益であり、平和の大義を前進させる」としている。
会談ではあわせて、2026年内に一連の経済協定を締結する方針でも一致した。イスラエル側の発表には、今後数か月のうちに両国間でハイレベルの相互訪問を行うとの記述もある。一方で、大使館そのものの開設時期についてはどちらの発表にも明記がなかった。
イスラエルとモロッコが国交を結んだのは2020年で、米国が仲介した「アブラハム合意」の枠組みによるものだった。この合意では、複数のアラブ諸国が相次いでイスラエルとの関係を正常化した。
背景
実は、大使館開設の表明は今回が初めてではない。2022年6月にも、当時のイスラエル外相ヤイル・ラピド氏が、モロッコがイスラエルに大使館を開設する見通しを示していた。それから4年余りが経った今回、あらためて同じ内容が表明された形であり、前回の表明が実際の大使館開設には結びつかなかったことをうかがわせる。
外交関係の格上げには、実務的な準備や国内の政治情勢など、時間を要する要因が絡むことが多いとみられる。今回の発表でも、経済協定や要人往来には「年内」「数か月以内」という比較的具体的な見通しが示された一方、大使館開設自体には期限が付されなかった。この差は、両国関係の中で何が優先されているかを示しているとも読める。
モロッコは2020年のアブラハム合意で国交正常化に踏み切った国の一つで、当時は米国が西サハラに対するモロッコの主権を承認したことと引き換えの形だった。中東・北アフリカ地域でのイスラエルの外交関係拡大は、この枠組みを土台に段階的に進められてきた側面がある。
日本にとっての意味
この話題は、中東・アフリカを結ぶ外交地図の変化を追ううえでは手がかりになる。モロッコは日本にとって、タコをはじめとする水産物の主要な輸入先の一つで、また欧州向けの自動車部品生産の拠点として進出する日本企業もある。同国の対外関係の安定は、日本と無縁ではない。
さらに、アブラハム合意という枠組み自体が、米国の中東外交が今も依拠する土台になっている点も見逃せない。この地域の安定は、日本が輸入に頼る原油や天然ガスの輸送路にも関わる。
もう一つの読み方として、今回のような「合意した」という発表が過去にも一度あった経緯を踏まえると、外交上の発表を額面通りに受け取るのではなく、その後実際に大使館開設や大使任命という具体的な進展が伴うかを見極める視点が必要になる。今回もその試金石になる。