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ゴミ箱とアイロン台に鮮やかな柄 インカ・イロリ氏、ブラバンシアと日用品8点

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ゴミ箱3種、アイロン台、物干しラック。どれにも黄色とオレンジと紫の柄が入り、ゴミ箱の胴にもアイロン台にも「THERE IS MAGIC IN JOY」の文字が刷られている。ナイジェリア系英国人のデザイナー、インカ・イロリ氏が家庭用品ブランドのブラバンシアのために手がけた「Home Collection」だ。8点すべてが限定販売で、価格は14.95ポンドから249ポンドまでになる。

何が起きたのか

ゴミ箱は3種類ある。脚の付いた2分別のタッチ式(11リットルと23リットルの組み合わせ、249ポンド)、それに5リットルと30リットルのペダル式だ。ほかに、アイロン台1台と替えのカバー2枚、洗濯物を25メートル分干せるラック、水筒と朝食用ボウルとサラダボウルのギフトセットが入る。

柄は全品に及ぶ。なかでもゴミ箱とアイロン台カバーは共通のモチーフを使う。上のほうではオレンジの線が何本もばらばらに走り、下へ向かうにつれて一本にまとまった縞模様になる。

この柄には理屈がある。イロリ氏によれば、個々の努力がやがて集まって一つの大きな絵になる様子を表したもので、人が自分の人生を作っていく過程と同じだという。だから上の線は個別のままにして、下でつながって一つの喜ばしい全体になるようにした。色は黄、オレンジ、紫という対比する組み合わせを選び、リズムと動きを出した。各品にそれぞれの人格を持たせながら、同じ一家に見えるようにもしたかったと述べている。

狙いは、高級品や収集品に偏っているデザインの重心を動かすことだ。「私にとって、この企画の全体は日々の暮らしの中に魔法を見つけることだった」とイロリ氏はDezeenに語った。一日に何度も使う物ほどないがしろにされがちで、そこに目を向けさせたかったという。日々の儀式や習慣があり、そこで使う物が生活の大きな部分を占めるのなら、その物が少しの喜びをもたらしてもいいはずだ、というのが同氏の理屈である。

ゴミ箱を選んだのにも同じ理由がある。ろくに意識しないまま長い時間を共にする物だからこそ、そこへ内面を与えるという発想が面白いのだと同氏は言う。自分の家のキュレーターになって、思いがけない場所に作品を置くようなものだ、とも語った。アイロン台については説明が単純で、本人がアイロンがけを好きで落ち着くと感じているため、自分の絵をそこに乗せるのは自然な流れだったという。

日用品に喜びを足すというこの路線の行き着く先を問われると、同氏は次の対象を即答した。「トイレブラシだ。間違いなくトイレブラシ。次の企画が見つかったようだ」

背景

ブラバンシアは1919年、オランダの町アールストで板金加工の会社として創業した。当初作っていたのは牛乳缶やじょうご、ふるいで、のちにフィリップス向けのラジオ筐体も手がけている。いまはごみ、食品保存、調理、洗濯まわりなどで約500品目を扱う。

イロリ氏は2011年、古い家具を作り直すところから活動を始めた。ナイジェリアの寓話と西アフリカの布地が下敷きにある。近年は英国の家庭用品小売チェーンDunelm向けの家具とホームウェアのコレクション、アフリカ・ネイションズカップのマン・オブ・ザ・マッチのトロフィー、ヴーヴ・クリコのインスタレーションなどを手がけてきた。

日本にとっての意味

日用品に派手な柄を載せて売る商売は、日本では60年近く前に一度成立している。花柄家電だ。

1967年、タイガー魔法瓶がポットの胴に花柄をあしらい始めた。描いたのはテキスタイルデザインの第一人者、関留辰雄氏で、白地に真っ赤なハイビスカスという柄だった。同じ年、象印マホービンも花柄のポットを出している。柄はその後、1970年発売の電気ジャーなど他の家電へ広がっていく。高度経済成長期のことで、殺風景なちゃぶ台や台所に潤いをもたらすものとして受け入れられた。

両社の社史は、この流行の理由を意匠ではなく技術に求めている。『象印マホービン70年史』は、当時の印刷技術のめざましい発達に負うところが大きいと書く。『タイガー魔法瓶70年のあゆみ』はもっと具体的で、塩化ビニール鋼板に特殊印刷を施し、さびたりはげたりしない点を最大の特徴として宣伝したと記している。イロリ氏の柄が乗っているのも鋼板のゴミ箱である。日用品を彩るのは、昔もいまも印刷の技術だ。

違うのは、柄と作者の関係のほうである。日本の花柄にも描いた人はいた。関留氏の柄は1972年のハンディポットで歴史的な大ヒットになっている。それでも商品の顔になったのは柄であって、作者の名前が前に出ることは少なかった。いまタイガーが創業100周年で当時の柄を復刻し、象印がまほうびん記念館で花柄家電の企画展を開いても、売り文句になるのは昭和という時代のほうだ。

イロリ氏のコレクションは、その順番が逆になっている。ブラバンシアのサイトに並ぶ8点は、商品名の末尾がすべて「- Yinka Ilori」で終わる。柄より先に名前が立ち、その名前で限定品として売られる。日用品に柄を載せる行為そのものは新しくない。新しいのは、その柄を誰が描いたかを商品の中心に据えることのほうだ。