海外政治

エジプト、2015年射殺の詩人遺族に10年超を経て補償金支払い

エジプト の記事一覧 ・ アフリカ

エジプトの詩人で活動家のシャイマー・サッバーグさんが警官に撃たれて死亡した事件で、政府が遺族に補償金を支払っていたことが分かった。事件から10年以上、裁判所が支払いを命じてから2年以上が経っていた。遺族側の弁護士によると、支払われたのは約30万エジプトポンド、6000米ドル弱に相当する額だったという。

何が起きたのか

サッバーグさんが死亡したのは現地時間2015年1月24日、「1月25日革命」の4周年の前日だった。革命の際に殺害された数百人のデモ参加者を追悼するため、カイロのタハリール広場の記念碑に花を供えていたところ、当時の警察が群衆排除によく使っていた散弾のような弾で背中を撃たれた。

この死をきっかけに、遺族は内務省を相手に長い法廷闘争を続けてきた。裁判所は2023年に補償金の支払いを命じたが、実際に支払われたのは、報道された現地時間2026年9月21日の前の週になってからだった。なぜここまで時間がかかったのかは、今回の資料からは分からない。

サッバーグさんを撃った警官については、2020年に7年の判決が言い渡されている。サッバーグさんの死はその後、エジプトの市民運動を象徴する出来事として語られるようになった。

背景

1月25日革命は2011年、当時のムバラク大統領の長期政権に対する抗議行動として始まり、「アラブの春」と呼ばれた一連の中東・北アフリカの民主化運動の一つに数えられる。カイロ中心部のタハリール広場は、この運動の象徴的な舞台として国際的にも知られるようになった。

サッバーグさんが撃たれたのは、この革命から4年後、当時の政権下でのことだった。

今回の補償金支払いが、国家として責任を認めたことを意味するのか、それとも裁判所の命令に従っただけの事務的な措置なのかは、今回の資料からは判断できない。裁判所の命令から支払いまで2年以上を要した経緯についても、公式な説明は伝えられていない。

日本にとっての意味

この事件と日本との直接の接点は薄い。ただし、権威主義的とされる体制のもとで起きた人権侵害の責任が、時間を経ても法的な手続きを通じて問われ続けるかどうかを示す事例として、記録しておく価値はある。裁判所が命令を出しても実際の支払いまで年単位の時間がかかったという今回の経過は、「命令が出た」ことと「責任が果たされた」ことの間にある距離を具体的に示している。

エジプトは日本にとって経済協力や観光の面でつながりのある国でもある。カイロを訪れる日本人旅行者にとって、タハリール広場は観光地としても知られる場所だが、そこがかつて弾圧の現場でもあったという歴史は、旅先の背景として知っておく意味があるだろう。