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プラハの韓国料理店、韓国らしさを記号でなく色と線で表現

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プラハの歴史あるマサリク駅のそばに、韓国の屋台料理を出す小さな飲食店「The Kimchi」が2026年に完成した。設計を手がけた建築事務所SOA architektiは、分かりやすい韓国の記号を並べる代わりに、色とグラフィックデザインの強度だけで韓国らしさを表現する道を選んだ。旧菓子店だった区画を、元の間取りを部分的に生かしながら改装している。

何が起きたのか

The Kimchiは、韓国出身の夫婦がプラハで開いた韓国の屋台料理店だ。設計はSOA architektiのシュテファン・シュレクとマテイ・ストシェハが担当した。店内を貫く最大の特徴は、外の看板からカウンター、壁面へと流れるように続く波状のラインだ。グラフィックデザイナーのトマーシュ・アイスネルと共同で作り上げた。

この波の形は、韓国の国旗中央にあるテグク(taegeuk、赤と青が渦を巻く陰陽の模様)を出発点にしながら、次第に抽象化されていったという。壁や什器、看板のロゴマークまでが同じ一本の線でつながることで、建築とグラフィックデザインが一体化した見た目になっている。

色づかいもこの店の柱だ。青はテーブルやベンチ、壁の仕上げ、照明にまで広がる。白いタイルの目地(タイルの隙間を埋める材料)を赤くすることで、ありふれたタイル面がグラフィックな格子模様に変わっている。カウンター上部にはオレンジ色の網状の素材が使われ、色の層がもう一段加わっている。

シュレク氏は「韓国のイメージそのものよりも、その視覚的なエネルギーに関心があった。色の強さやコントラスト、グラフィック、食文化、そして現代のソウルだ」と説明している。狭い店内では、多くのモチーフを持ち込むより、一つの強い身振りに絞る方が効果的だったという。

店の運営面も設計に組み込まれている。仕込みの大半は客席から離れた場所で済ませ、仕上げの調理と盛り付けはカウンターで客の目の前で行う。座席も窓際の高い椅子から長いベンチ、個別のテーブル、コンクリート製の共用の大きなテーブルまで種類を持たせ、限られた面積の中に変化をつけている。

背景

The Kimchiが注目されるのは、具象的なモチーフをほぼ使わず、色とグラフィックの強度という抽象的な要素だけで出身地のイメージを伝えようとした点にあるとみられる。

もう一つの背景として、この店では内装の設計とロゴ・看板などのグラフィックデザインが最初から並行して進められたことが挙げられる。ブランディングを内装が完成してから後付けするのではなく、建築家とグラフィックデザイナー、店主が同じ段階で材料や色、サインを詰めていく手法は、近年の小規模飲食店の設計で広がりつつある進め方の一つとみられる。

また、プラハでは歴史的建造物や古い店舗の区画をそのまま転用して新しい飲食店を開くことが多いとみられ、The Kimchiも旧菓子店だった区画の制約を生かした設計になっている。限られた床面積の中で調理動線と客席を同時に成立させることは、都市部の狭小な飲食店設計に共通する課題といえる。

日本にとっての意味

海外で日本食を掲げる店の内装は、暖簾や障子、赤い提灯、木材といった「和」を示す記号を積み重ねる形になりやすい。The Kimchiの手法は、そうした記号の束に頼らず、色とグラフィックデザインという一点に絞って出身地の空気感を伝えるという、別の選択肢を具体的に示している。

特に参考になるのは、内装の設計とロゴ・看板のデザインを別々の担当者が別の時期に進めるのではなく、最初から一体で発注し詰めていくという進め方だ。海外に日本食店を出す際、店の顔となるサインや配色を建築設計と切り離して考えがちな例は少なくないとみられ、この事例はその逆を示している。

また、狭い物件で仕込みと仕上げの調理を分け、客席から調理の一部を見せるという配置は、都市部の限られた面積で日本食店を構える際にもそのまま応用できる考え方だ。小規模な事例だが、海外で自国の食文化をどう見せるかを考える上で、具体的な手がかりを与えてくれる。