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英国、460万ポンドのルネサンス彫刻に輸出差し止め

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英政府の文化担当省庁(DCMS)は、16世紀初めにイタリアの彫刻家アンティコが手がけたブロンズ像「座るニンフ」に輸出差し止め(export bar)を出した。評価額は460万ポンド(約9億円強)で、国内の美術館や機関が買い取る機会を確保するための一時的な措置だ。所有者は現時点で国外への持ち出しができない。

何が起きたのか

差し止めの対象となった「座るニンフ」は高さ20センチほどのブロンズ像で、1503年頃の制作とされる。髪や衣のひだには水銀を使った金めっきが施され、目には銀が象嵌されている。かつてベッドフォード公爵家のコレクションにあった作品で、2009年にサザビーズ・ロンドンで手数料込み140万ポンドで落札された。2026年に入って美術商パトリシア・ウェングラフの手を経て現在の所有者に460万ポンドで売却され、その後、輸出許可の申請が出されたとみられる。

英紙テレグラフによれば、この像は公爵家の邸宅ウォバーン・アビーで長く納戸の外に置かれていたという。当時の公爵はこの像を「つまらない小さなブロンズ」としか見ていなかったと伝えられる。17年のあいだに評価額はおよそ3倍に膨らんだことになる。

輸出差し止めは、DCMSに助言する独立機関「輸出審査委員会」の勧告に基づく。この委員会は、国外に持ち出される予定の美術品や文化財について、国にとって重要かどうかを審査する役割を担う。委員のひとりで彫刻商のスチュアート・ロックヘッド氏は声明で、アンティコが古典古代の彫刻を模す技術で名を上げ、マントヴァ宮廷の代表的な芸術家のひとりになったと説明している。

今回の措置は現地時間の2026年12月17日にいったん期限を迎え、その後所有者には推奨価格での買い取り提案を検討する15営業日の猶予が与えられる。さらに5か月の保留期間が設けられる。就任したばかりの美術・博物館担当大臣ルース・マッケンジー氏は「この輸出差し止めが、公にも美しさを楽しんでもらえるこの国にこの見事な彫像を留める助けになることを強く望む」と述べた。

なお「座るニンフ」の別バージョンはワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートが所蔵しており、2012年にニューヨークのフリック・コレクションで開かれたアンティコの大規模展にも出品された。アンティコの主要作品はケンブリッジのフィッツウィリアム美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館にも収蔵されている。

背景

英国のこの制度は、所有者が実際に輸出許可を申請した時点で初めて作動する仕組みだ。つまり国内にとどまっている限り国が積極的に監視するものではなく、売買によって国外に出て行こうとする瞬間だけ審査の対象になる。

審査を担う委員会は美術史家や美術商など専門家で構成され、国にとって重要と判断した作品について、国内の買い手に猶予期間を与えるよう勧告する。

輸出差し止めはあくまで一時的な措置であり、国内の美術館などが推奨価格で買い取れなければ、最終的には国外への持ち出しが認められる点も特徴だ。強制的に国内にとどめる制度ではなく、時間を区切って国内の買い手に競争の機会を与える、市場を介した救済策に近い。

日本にとっての意味

日本では、国宝や重要文化財に指定された物件などについて、文化財保護法により原則として海外への輸出が禁じられている。国が指定した特定の作品を対象に持ち出しそのものを止める仕組みであり、英国のように輸出許可の申請が出た時点で審査し、国内の買い手に買い取りの猶予を与えるやり方とは設計が異なる。英国の事例は、文化財の国外流出を防ぐ枠組みが国ごとに異なることを示しており、日本の制度を考えるうえでも比較材料になる。