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1994年ルワンダ虐殺、英国が初の刑事訴追 ロンドン在住の65歳起訴

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英国の検察当局は現地時間の9月21日、1994年のルワンダ虐殺に関与した疑いでロンドン在住の男を起訴したと発表した。英国がこの虐殺に関連して人を起訴するのは初めてで、男は現地の22日にウェストミンスター治安判事裁判所に出廷する。起訴容疑はジェノサイド(genocide、集団殺害)への加担1件と、人道に対する罪としての殺人への加担6件の計7件にのぼる。

起訴されたのはヴィンセント・ブラウン容疑者(65)。旧名をヴィンセント・バジニャといい、かつてルワンダの首都キガリに住み、その後ロンドンのイズリントン地区で暮らしていた。国籍については報道が分かれており、英国のメディアはルワンダ国籍と伝えた一方、AFP通信は2006年の時点で英国籍を取得していたと報じていた。検察当局の声明はブラウン容疑者について「他の者による殺人とジェノサイドの実行を指示し、扇動したとされる」としている。

ロンドンの対テロ警察部門トップ、ヘレン・フラナガン氏は「英国は、国際犯罪への関与が疑われる人物にとっての安全な逃げ場ではない」と述べた。捜査を担ったのは同部門の戦争犯罪班で、2019年9月に着手した。フラナガン氏によると、ルワンダ虐殺に関連する同様の容疑での捜査は英国内でほかにも続いているという。

ブラウン容疑者は2006年に一度逮捕されていた。当時は他の4人とともにルワンダへの身柄引き渡しが検討されたが、2017年に英国の裁判所がこれを退けた経緯がある。その後ルワンダ政府は英国政府に対し、1994年4月にキガリのルゲンゲ地区で起きた事件への関与が疑われる人物を英国自らの手で捜査するよう求めていた。

何が起きたのか

英検察当局(CPS)の特別犯罪・対テロ部門トップ、フランク・ファーガソン氏が明らかにしたところによると、ブラウン容疑者は1994年のルワンダでのツチ族に対する殺人やジェノサイドの実行を、他者に指示・扇動したとされる。100日間で約80万人が撲殺や銃殺、マチェーテ(山刀)によって殺害された。犠牲者は主にツチ族と穏健派フツ族の人々だった。

今回の起訴は、2006年の逮捕と2017年の身柄引き渡し却下を経て、ルワンダ政府の要請を受けた英国側が2019年9月から独自に進めてきた捜査の結果である。着手から7年に及ぶ捜査だった。フラナガン氏は、こうした戦争犯罪班の捜査には膨大な労力と執念が注がれたと述べている。

背景

ルワンダの虐殺は、多数派のフツ族と少数派のツチ族の間で長年くすぶっていた対立が、1994年4月にハビャリマナ大統領の乗った専用機が2発のミサイルによって撃墜されたことをきっかけに一気に噴き出す形で始まったとされる。以降およそ100日間で、国内のツチ族と穏健派フツ族の人々が組織的に殺害された。

事件から30年以上が経ち、加害を実行または指示したとされる人物の一部が、事件当時と直接関係のない第三国で暮らしているという構図が各地で指摘されてきた。こうした事案では、実行地であるルワンダでの訴追だけでなく、容疑者が現在暮らす国の裁判所が捜査・起訴に踏み出す例がある。英国のほかにも複数の国が、これまでルワンダ虐殺の容疑者を訴追してきたと報じられている。

こうした動きの背景には、重大な国際犯罪については自国と直接の関係がなくても自国の裁判所で裁くべきだという考え方があるとされる。国際法の分野では一般に「普遍的管轄権」と呼ばれる仕組みで、ジェノサイドや人道に対する罪のような重大犯罪を、事件の発生地や被害者・加害者の国籍にかかわらず処罰の対象にできるという発想に基づくとされる。今回の起訴がこの考え方を根拠にしたものかどうかは、今回の資料からは明らかではない。

日本にとっての意味

事件から30年を経て第三国が自国の裁判所で外国の虐殺を裁くという枠組みそのものは、日本の読者にとって考える材料になる。日本は国際刑事裁判所(ICC)の加盟国である一方、ジェノサイドそのものを処罰する国内法を持たない。仮に日本国内に、外国での虐殺や重大な人道犯罪への関与が疑われる人物が暮らしていた場合、どのような法的手続きが可能なのかは必ずしも整理されていない論点だといえる。

また、こうした事案は入管や難民認定の審査にも関わりうる。重大犯罪への関与歴の有無が在留や難民認定の判断に影響することは各国で起こり得るためだ。英国のケースのように、事件から長い年月を経て第三国での捜査が動き出すこともある。日本でも、在留や難民認定の審査で過去の重大犯罪への関与をどこまで確かめられるのか、その結果をどの手続きにつなげられるのかは、この起訴を機に点検できる論点である。