新型コロナで入院した50歳以上、感染後数か月は脳卒中リスク上昇
新型コロナウイルスに感染して入院した50歳以上の人は、感染後の数か月間、脳卒中を起こすリスクが一時的に高まるとの研究結果が示された。イスラエルのハイファ大学とカーメル医療センターの研究チームによるもので、査読前論文を掲載するサイト「Research Square」に2026年9月23日に発表された。上昇は感染後の一定期間に限られ、時間が経つと元の水準に戻るとみられる。
何が起きたのか
研究チームは、イスラエルの大規模医療システムに登録された、脳卒中の既往がない50歳以上の約120万人を2020年3月から2022年5月にかけて追跡した。あわせて、この期間に脳卒中を発症した11,974人を、発症していない119,740人の対照群と照合する症例対照研究も行った。脳卒中を発症した人のうち9.3%は、直前にコロナ感染歴があった。
分析の結果、入院を伴うコロナ感染は、脳卒中全体(脳梗塞と脳出血をあわせたもの)のリスクを23%押し上げる関連が見られた。内訳は脳梗塞が22%、脳出血が18%の上昇だった。リスクの上昇は感染から3か月以内が最も大きく、35%だった。上昇は主に入院を要した重い感染例に限られていた。
コロナ接種歴がある人は、新たに脳卒中を発症する割合が21%低いという関連も報告された。研究チームは「入院を要する新型コロナ感染は、急性で時間の限られた脳卒中リスクの上昇をもたらすが、その大きさは肺炎後に見られるものよりやや小さい」と結論づけている。データはまだ査読を経ていない。
背景
プレプリント(preprint)とは、学術誌の査読を受ける前に研究者が公開する論文原稿を指す。速報性はあるが、他の専門家による検証を経ていないため、結果は今後変わりうる。今回の研究も、査読前の段階にある点に注意が必要だ。
手法としては、脳卒中を発症した人1人につき約10人の対照者と条件を揃えて比較する症例対照研究が使われた。この方法では、感染と脳卒中の間に統計的な関連を示せても、感染が脳卒中を引き起こしたという因果関係そのものは証明できない。
感染症が血管に影響する背景には、炎症の広がりや血液が固まりやすくなることが関わるとみられる。脳梗塞は血管が詰まるタイプ、脳出血は血管が破れるタイプの脳卒中で、原因や治療方針が異なる。過去には、コロナ入院者の脳卒中リスクが17.5倍という報告もあったが、比較の方法が異なり単純には並べられないとみられる。
日本にとっての意味
国内の急性期病院416施設のレセプトデータを使い、2020年1〜9月の入院例を調べた研究では、コロナで入院した9282人のうち9.0%が血栓性疾患を発症したことが分かっている。ただしこの調査が数えているのは入院期間中の事象とみられ、今回の研究が指摘する感染後数か月にわたるリスクの高まりとは、対象とする時間の窓が異なる。
一方、新型コロナワクチンの定期接種は、対象が65歳以上、または60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能かHIVによる免疫機能に1級相当の障害がある人に限られている。国内では2026年10月1日から始まる。今回の研究の対象は50歳以上で、接種歴のある人は新規脳卒中が少ないという関連も示されたが、50〜64歳で該当する障害のない人は、この定期接種の対象から外れる。